仮想化バックアップでスタートしたVeeam Softwareは、ハイブリッドクラウドに向けて戦略を進めている。年商10億ドルを達成した同社が描く、次の成長戦略はどのようなものか-――鍵を握るインテリジェンス、ハイブリッド/マルチクラウドへの取り組みの詳細について製品戦略担当バイスプレジデントのDanny Allan氏に聞いた。
--Veeamが提唱する「インテリジェント・データマネジメント」とは何か?
幾つかの要素があるが、重要なもの3つを紹介したい。1つ目はクラウドデータマネジメント。企業の多くはオンプレミスとクラウドの両方でデータを持っており、クラウドデータマネジメントでは複数の場所でデータを移動できることを目指す。
Veeam Software 製品戦略担当バイスプレジデントのDanny Allan氏
2つ目はデータのコピーとその管理。これにより、企業はもっと迅速に動くことができる。ITオペレーションチームはパッチのテストができ、セキュリティーチームはセキュリティーを検証できる。例えば、インシデントが起こったらフォレンジック調査ができ、コンプライアンスチームはGDPR(欧州の一般データ保護規則)の順守について分析ができる。
3つ目は、機械学習とAI(人工知能)。現在も進展中の技術であり、将来に向けて実現していくが、データが自己認識型になるだろう。われわれは現在、人間が判断してデータを動かしているが、長期的には特定のデータを何年間保持するか、どこに保持するかなどは、機械学習を活用して決めることになる。
--機械学習とAIの要素が製品に入るのはいつ頃の予定か?
既にインテリジェントな診断機能は製品に実装している。全体の環境を見て、プロアクティブに修正するものだ。だが、機械学習やAIがメインストリームの技術になるのは10年ぐらい先だと予想している。クラウドが主流になるまで10年かかった。機械学習やAIはバズワードだが、まだラボでテストしたり実験的に使われ出したりしている段階に過ぎない。われわれは、これらの技術の活用について作業しており、長期的な取り組みになる。
--ハイブリッドクラウドにフォーカスするという戦略を打ち出している。マルチクラウドで重要になるコンテナーはどうか?
ハイブリッドクラウドは技術上の意思決定で、マルチクラウドはビジネス上の意思決定だ。ハイブリッドクラウドが技術の意思決定であるという理由として、企業はデータをオンプレミスに持っており、バックアップのためにクラウドに移行するかどうかは技術的な意思決定と言える。どうやってクラウドをデータセンターの一部にするかの問題だ。
一方で、マルチクラウドがビジネス上の意思決定である理由は、ROI(投資利益率)主導でAWS(Amazon Web Services)にするか、Azure(Microsoft Azure)にするかを決定している。Veeamは、ハイブリッドクラウドとマルチクラウドの両方をサポートする。顧客を見ると、どうやってデータセンターをクラウドに拡張するか、そのハイブリッドクラウドの段階にあるようだ。2~3年後はマルチクラウドが増えるだろう。
われわれは顧客の環境や動向を見ながら、製品に機能として反映させていく。既にデータがオンプレミスにあるのか、どのパブリッククラウドにあるのか、優れた可視化を実現している。どのぐらいのデータが「Azure Blob」にあるのか、「Azure S3」にあるか、場所と量の両方を把握できる。
コンテナーは少しずつ“離陸”が始まっている。Veeamはコンテナーの保護ができるし、この分野に大きな投資をしている。Kubernetesはここで主流の技術だが、ハイパーバイザーの保護で管理プレーンを保護したのと同じように、Kubernetesやその他のコンテナープラットフォームでも管理プレーンの保護を進める。積極的に投資をしており、現段階ですぐに話せないが、注目してほしい。
--競合をどう見ている?
Veeamは(売上高が)10億ドル企業で35万の顧客がいる。レガシー企業へシンプルと信頼性のあるバックアップを提供することにより到達した。Veritas、Avamar(Dell EMC)、Commvaultなどに比べると、Veeamはシンプルで信頼性がある。ここ数年で台頭したRubrik、Cohesityなどと比較すると、これらのベンダーがアプライアンスベースのモデルを取っているのに対し、Veeamは柔軟性がある。
われわれはハードウェアを手がけない。NetAppやNimble、IBM、Lenovo、Huaweiなどと提携しており、先に富士通とも提携を結んだ。これが意味することは、われわれは中立ということだ。クラウドも同じで、AWS、Azureなどとの統合を実現している。アプライアンスの場合、シンプルで信頼性はあるがロックインされる。Veeamのアプローチはソフトウェア定義であり、パートナーがアプライアンスモデルを提供できる。Veeamの柔軟なアプローチは市場で実証されている。
--シンプルさと多機能性をどうバランスさせるのか?
2つを挙げたい。1つはよくあるワークフローとして製品に抽出すること。2つ目はユーザーに代わって機械学習が意思決定をすること。例えば、10のデータプロキシーがある場合、Veeamの製品は自動的にどのデータプロキシーが最適かを決定する。データを動かすとき、iSCSIかファイバーチャネルかなどをユーザーに聞かない。検出して最適なものを使う。もちろん、顧客側で設定もできるだが、データをどこに置くべきか、どうやってデータを収集すべきか、などの意思決定を顧客の代わりに行う。
--セキュリティーではどのような取り組みをしているのか?
セキュリティーでは、パートナーがより安全なリカバリーとバックアップを提供しており、VeeamはWindows Defender、Symantec Protection Engine、ESET NOD32をネイティブに統合している。事実上全てのセキュリティー企業と統合可能で、これにより安全にデータのリカバリーを実現する。これは「Update 4(Veeam Availability Suite 9.5 Update 4)」で実現した。