進化するSD-WANはクラウドとの統合に向かう--ネットワークのこれからを考える

宮澤敏明 (シトリックス・システムズ・ジャパン)

2019-06-20 06:45

 Citrixは2018年にSD-WANがハイブリッドクラウドへの移行のバックボーンになるだろうと予想しました。SD-WANはMPLS(Multi-Protocol Label Switching)の強力な選択肢となり、企業はパブリッククラウドの新たなWANサービスとしてすばやく導入を進めています。

 そして、SD-WANはさらに進化し、クラウドサービスとの一層緊密な統合へ向っていき、これからの1年、導入のスピードは速まる一方です。しかし製品が中心だった2018年とは違い、2019年はサービスが主役になると思います。

 情報の保護やアプリケーション統合の柔軟性を考えると、企業のSaaSへの移行は留まることなく続くでしょう。ますます多くのエンタープライズ向けのアプリケーションやデータがクラウドに移行し、オンプレミスに戻ることはないと考えられます。

 企業はデータアクセスやネットワークの耐障害性、拠点向けサービス、在宅勤務やモバイルユーザーに注力し、SD-WANを介したSaaSの提供をいかに簡素化し、優れたユーザーエクスペリエンスを確保するかが最優先事項になることが予想されます。

 また、SaaSはITマネージド型アプリケーションに取って代わるにつれて、オンプレミスのサービスと同等もしくはそれ以上のレベルの可用性を維持することが求められるようになるでしょう。導入の爆発的な広がりによって、ほんの瞬間であっても停止も許されなくなると考えてられます。

 ITリーダーは月単位ではなく分単位で、国ごとではなくユーザーごとにサービスの可用性指標を見たいと考えるでしょう。SaaSのリーダーはこうした期待に応えるための新たなツールを追求し、その反動でアプリケーション性能管理(APM)やコンテンツ配信網(CDN)、トラフィック管理サービスといった製品やサービスの変革がさらに進みます。

 クラウドが導入されて、次の10年に入ろうとする今(事実、Amazon Web Servicesは誕生から12年目を迎えました)、エラスティックコンピューティングの構図を再定義するマイクロサービスの導入が加速するなど、これまでのようにインフラストラクチャにコストをかける代わりに、利便性、柔軟性、さらには豊富なクラウドサービスにコストを費やすことになると考えます。何十年も前のネットワーキング技術をベースにしたクラウド接続は、SD-WANが可能にする完全に自動化されたクラウドと企業との接続へと変わっていくと想像しています。

 さまざまな大企業によって、ITの考え方は大幅に異なります。IT労働力が比較的豊富に得られる国では、サービスは依然として社内で調達されます。一方、IT労働力のコストが高い所ではITサービスの消費が当たり前です。

 このトレンドは2019年も続くと予想され、この先大きく変動する可能性があるマクロ経済においてはなおさらそうした傾向が強まります。

 SD-WAN、VPN、セキュリティ、ワークスペース、アプリケーション配信サービスまで、誰にでもワンストップですべてを提供できるマネージドサービスプロバイダーがますます求められます。中堅クラス以上の企業にとっては、パフォーマンスとセキュリティ、可視化のシームレスな統合が、ベストオブブリードの一体化されたサービスを凌ぐものになります。

 ネットワークの未来とは、要するに何を選択するかの問題です。そして、2019年にはますます多くの企業が業務を根本から変革し、従業員の参画意識を高め、より良い働き方を実現するために、SD-WANを選択することになります。

宮澤敏明(みやざわ・としあき)
シトリックス・システムズ・ジャパン セールス・エンジニアリング本部 ネットワークSE部 部長
ダイヤルアップやメインフレームの時代からネットワークを担当。様々な基盤で活用されるアプリケーションインフラのソリューションを提供し、企業WANからオンプレデータセンターやクラウドまでエンタープライズITの進化を支援。

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