エアバスが複合現実の活用推進へ--マイクロソフトと連携

Greg Nichols (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 石橋啓一郎

2019-06-25 07:30

 パリで開催された航空宇宙業界最大のイベント「Air Show」の1日目、大手航空機メーカーであり、世界でも最大規模の製造業者であるAirbusは、複合現実(MR)技術を大規模に導入する計画を発表した。Airbusは、Microsoftのクラウド+AIグループと協力しながら同社の複合現実戦略を推進している。

HoloLens

 Boeingが「737MAX」に関する問題で窮地に陥っていることもあって、Airbusの事業は好調で、需要は増加しているようだ。このことが、同社の製造ラインに圧力を加えている。Airbusは民間航空機以外にヘリコプターや人工衛星も製造しており、今後20年間で2万機以上の航空機を製造する計画だという。

 Airbusのエンジニアリング担当エグゼクティブバイスプレジデントJean-Brice Dumont氏は、「今後のわが社の課題は、速く多くの航空機を製造することであり、そのためには、従来よりも優れた装備を用意して従業員の能力を高め、効果的に作業を行えるようにする必要がある。わが社は目指すべき水準を引き上げなければならない」と語り、「この課題を解決するために複合現実を積極的に利用するつもりであり、そのためにMicrosoftとのパートナーシップを結んだ」と付け加えた。

 Microsoftの「HoloLens」は、光と音で構成されたホログラムを使用し、現実世界の上に被せて3Dのデジタル情報を表示することができる。最近発表された「HoloLens 2」で大きく変わったのは、ユーザーがホログラムを物理的なオブジェクトであるかのように扱えるようになった点だ。また、多くの最新の拡張現実(AR)デバイスや仮想現実(VR)デバイスではあまり注目されていないが、アイトラッキングは、デバイスがユーザーが画面のどこを見ているかを判断することを可能にする有機的なユーザーインターフェースとして機能する。アイトラッキングはエンゲージメントの水準を計測するためにも使えるため、従業員のトレーニングに役立つ。

 Airbusは複合現実を製造ラインとトレーニングの両方で幅広く導入する計画だ。例えば、従業員がHoloLens 2を使用して、実際の製造用の機器を使わずに重要な手順を学んだり、危険性がある状況を経験してみたりすることができる。もう1つの利点は、トレーニングを遠隔地で行うことができることだ。

 同社はこれまで限定的な形でMicrosoftの複合現実技術を使用してきたが、今後は製造ラインの作業員が、両手がふさがっている状態で情報や指示書を見られるようにするためにも使用されるという。例えば、複雑な作業や、手が届きにくい場所で行う作業で、実際の機器の上に被せる形で説明や図を表示することが考えられる。両社の共同発表に伴って公開されたプレスリリースによれば、この種の複合現実ソリューションは、品質を落とさずに、製造に掛かる時間を最大で3分の1短縮できるという。

 「複合現実は品質、安全性、セキュリティの向上に役立つ」とDumont氏は言う。「これによってヒューマンエラーのレベルが大きく低減するが、航空宇宙業界では品質の向上は安全性の向上にもつながり、当然ながらそれに伴ってセキュリティも向上する」

 AirbusとMicrosoftは、Airbusの顧客向けの複合現実ソリューションも開発している。これらの複合現実トレーニングプログラムは、まず日本航空(JAL)と連携して提供され、メンテナンス要員や客室乗務員が作業中に指示書にアクセスできるようになるという。

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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