人工知能(AI)への企業の期待は増すばかりだが、最近になりその先行きを悲観する声も出てきている。いつまでも概念実証(PoC)の領域を脱することができず、「PoC疲れ」が起きているという話をあちこちで聞くようになってきた。
IDCが世界の組織2473社を対象に実施した調査の分析では「AIプロジェクトに参加したい人が多過ぎて、統率が取れていない。AIと機械学習は非常にテクニカルな分野だが、データ科学の優秀な人材が不足しているのが現状だ。その一方でスキルはなくても、今注目のAIプロジェクトに参加したい人が社内に大勢いる」という。
現状では、目的、実施方法、人材ともに導入のシナリオがはっきりしない中で、期待だけが高まっているという状況だ。調査は、AIの原動力は、生産性、ビジネスの機動性、自動化による顧客満足度であると報告している。既存のプロセスの効率化であればまだ話は分かりやすい。
一方で、AIの本当の実力は、現状ではできないことを可能にするイノベーションの実践にある。
最高球速163キロという大船渡高校の佐々木朗希(ろうき)投手。高校生離れしたそのピッチャーを打ち崩すのは困難だ。そこに登場したのがAIだった。岩手県の盛岡大付属高校では「ピッチ18」というAI搭載のピッチングマシンを導入した。ピッチ18に「ローキ君」という名前を付け、変化球を交えながら170キロの球を投げさせた。
これにより目が慣れて、結果として、盛岡大付属は大船渡に7対5のスコアで打ち勝った。「佐々木君よりマシンの方が速かった」とのコメントが飛び出したとのこと。これこそAIが起こすイノベーションといえる。
こうした成功には、指導者の柔軟な発想力とテクノロジーへの興味、既存の方法をゼロから考え直す大胆さ、実施の際のリスク管理などさまざまな要因が絡んでくる。既存をベースにしたカイゼンやPDCAでは、たどり着かない領域であるケースも考えられる。この辺りは、AIの実導入が今後も容易ではないであろう根本的な要因かもしれない。
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