GDPとは異なる経済指標を考えていく必要も
PwCでは、シェアリングエコノミーを「個人などが保有する遊休資産などを、インターネット上のプラットフォームを介して他の個人などが必要なタイミングで利用することを可能にする経済活動の総称」と定義している。遊休資産とは活用されていない資産のことで、有形のものだけでなくスキルや時間など無形のものも含む。
同社の調査では、図1に挙げた内容を対象としている。調査は2019年5月、国内全域の一般消費者(16~70歳代の男女)を対象にウェブによるアンケート形式で実施し、2000人から回答を得たという。
図1:シェアリングエコノミーのカテゴリー(出典:PwC)
認知度という点では、図1の内容を説明した上で「いずれかのサービスを知っている」と回答(複数可)した割合が47.5%と、2018年より5.1%高まった。その47.5%の人たちに、図1のカテゴリー別の認知度を聞くと、「移動手段」「モノ」「場所、空間」が上位に。この傾向は過去2回の調査と変わらなかった。(図2)
図2:カテゴリー別の認知度(出典:PwC)
そして、シェアリングエコノミーが今後の日本経済、社会に与える影響についての調査結果も紹介しておこう。図3に示すように、「影響があると思う」との回答が59.8%とほぼ6割を占めた。これまでの認知度や利用意向の調査結果からすると意外に高いように見て取れるが、自分が利用したいかどうかは別にして世の中には影響があると感じている人が多いということだろう。
図3:シェアリングエコノミーが今後の日本経済・社会に与える影響(出典:PwC)
また、図3の下のグラフは、影響があると答えた人の内訳を記している。それによると、「無駄な生産、消費を減らす」と「イノベーション創出につながる」の2つが3割を超えて他を大きく引き離した形となった。筆者もこの2つが、まさしくシェアリングエコノミーのインパクトを象徴していると捉えている。
最後に、主題であるシェアリングエコノミーとGDPの関係について考察しておきたい。今回、内閣府がシェアリングエコノミーをGDPに反映させる方針を示したが、一方で、筆者はこの分野の専門家に取材した際、次のように言われたことも印象に残っている。
「そもそもシェアリングエコノミーは、大量生産、大量消費を前提とした現在の指標であるGDPを押し上げる効果はあまりない。シェアリングエコノミーは経済構造、ひいては社会構造を根底から変えていく動きになり得る。GDPについても全く違った尺度を考えていく必要があるのではないか」
今後、GDPとは異なる経済指標を考えていく必要があるかもしれない。さらに、これからは経済のデジタル化を表す「デジタルエコノミー」とシェアリングエコノミーが、どんどん融合していく可能性がある。
そう考えると、今回の動きは、シェアリングエコノミーのGDPへの反映とは裏腹に、経済指標のあり方の見直しを迫られる「デジタル・シェアリング・エコノミー」時代の到来を示唆したものかもしれない。