Chatworkは、基本となる「チャット」機能に加えて、「タスク管理」「ファイル共有」「ビデオ、音声通話」などビジネスコミュニケーションに必要とされる機能をワンストップで提供している。

山本正喜氏。電気通信大学情報工学科卒業。大学在学中にEC studio(現Chatwork)を2000年に創業。以来、CTOとして多数のサービス開発に携わる。2011年3月にクラウド型ビジネスチャット「Chatwork」を提供開始。2018年6月、代表取締役CEO兼CTOに就任。
他のサービスとの違いについて、山本氏は「オープンプラットフォームである点」「シンプルで直感的なユーザーインターフェース(UI)設計である点」を挙げている。
社内でのコミュニケーションを前提とするグループウェア延長型の設計思想ではなく、社内外を問わないメンバー間でのやり取りを前提としているという。そのため、オープンなプラットフォーム設計を採用し、他のビジネスチャットでは難しい同一IDでのスムーズなコミュニケーションが取れると説明する。また、シンプルで誰でも使いこなしやすいUIを採用。ツール導入のハードルを抑えている点も特徴と語る。
「止まると仕事にならない」--障害で上場目指す
同年6月には米Slackがニューヨーク証券取引所に上場を果たすなど、大きな動きを見せつつあるビジネスチャット市場。Chatworkが上場した意義とはどこにあるのだろうか。
山本氏は「以前は自己資金だけで黒字経営をするという方針で事業を行ってきましたが、2014年に起きた障害を契機に考え方が変わりました」と語る。“止まってしまうと仕事にならない”という声がSNSなどで見受けられ、Chatworkが多くの企業のビジネスインフラという、落とせないサービスとなったことを実感したという。
その後、サービスの順調な成長とともに、足りなくなったエンジニアや技術力を担保すべく方針を転換。ベンチャーキャピタル(VC)からの資金調達を2015年に受け、上場への準備を進めてきた。
先が見えづらいSaaS事業において事業計画の蓋然性を保つのは難しい面もあったが、「ビジネスの根幹を担う企業としての“信頼性”や“事業継続性”の獲得を目指してきました」と山本氏は振り返る。
上場後は、市場からのプレッシャーや株主などステークホルダーなどへの新たな責任も担うことになる。山本氏は「コミットメントをしっかりと担保すること、短期的な目線にならないように中長期で業績を伸ばすことが、真の株主貢献だと考えています」と語る。
また、今後のビジョンについては「Chatworkがより多くの企業を支えるインフラになることを目指します。ビジネスチャットがキャズムを超える日は、そう遠くはないと思います。10年経つと世代がガラッと変わるように、働き方改革などと相まって3~5年後には大きな構造転換を起こしていきたいです」と意気込む。
今回の上場で、ビジネスチャット文化の普及に尽力する姿勢をより明確にした同社の今後の展開に期待したい。