PwCが語る、クラウドDWHを早期導入したメリット

末岡洋子

2019-10-16 06:00

 SAPが5月にベータ版として発表した「SAP Data Warehouse Cloud」が2019年内に一般提供される。SAPおよび非SAPシステムからデータを集めてアナリティクスなどに活用でき、2000社以上がベータプログラムに参加したという人気のクラウドサービスだ。10月10日までスペインのバルセロナで開催された「SAP TechEd Barcelona 2019」で、同製品をいち早く使ったPwCの幹部は、「顧客がこれまで抱えていたデータの問題を解決する」と期待を寄せた。

 SAP Data Warehouse Cloudは、SAP HANAを土台としたクラウドサービス群「SAP HANA Cloud Services」の一部。データ管理機能とデータアナリティクス機能を組み合わせることで、信頼できる意思決定に導くというものだ。ビジネスセマンティックレイヤーにより、データを動かす必要がない上、SAPだけでなく非SAPのデータも活用できる点も特徴となる。

SAPのSAP HANA&Analytics担当シニアバイスプレジデントのGerrit Kazmaier氏(右)とSAP最高技術責任者(CTO)のJuergen Mueller氏(左)
SAPのSAP HANA&Analytics担当シニアバイスプレジデントのGerrit Kazmaier氏(右)とSAP最高技術責任者(CTO)のJuergen Mueller氏(左)

 SAP HANA&Analytics担当シニアバイスプレジデントのGerrit Kazmaier氏は、SAP Data Warehouse Cloudの最大の価値がデータの品質だと話す。「多くの企業でデータのバリューチェーンが分断されている。大規模なデータベースを持っていても活用されていないし、たくさんのデータレイクを構築しているが、十分に活用できない」(Kazmaier氏)。データがあちこちに複製されているため、データ主導の意思決定ができないという問題につながっていると指摘する。「データを信頼できない。これが、機械学習などのデータサイエンスプロジェクトがデモ段階から先に進まない理由になっている」(Kazmaier氏)

 欧州でPwCとSAPとの提携を担当し、開発段階からSAPと関わっているというPwCのNico Reichen氏は、データアナリティクスのコンサルタントでもあることから、この問題を熟知している。「SAPのDigital Boardroom(大規模な画面に必要なデータを表示する財務責任者など経営層向けのソリューション)といったアイデアは素晴らしいが、顧客は『データがバラバラで簡単に集められない』という課題を抱えている」(Reichen氏)。バラバラな場所にあるだけでなく、データのフォーマットや構造も異なる。

 これまでもSAPは、この問題に取り組んできた。しかしReichen氏は、きちんとあるべき姿で動かなかったという。例えば、その一つの「SAP BusinessObjects Explorer」はさまざまなシステムを接続できるはずだが、「エンドユーザーにはテクニカル過ぎた」という。

PwCのNico Reichen氏
PwCのNico Reichen氏

 PwCは、Digital Boardroomと「SAP Analytics Cloud」を組み合わせた「Reporting 5.0」をSAPと共同開発しており、このようなデータの問題をSAPのKazmaier氏らに説明していた。そのような背景もあり、SAP Data Warehouse Cloudが誕生したようだ。SAP Data Warehouse Cloudは、簡単に利用できるようにビジネスセマンティックレイヤーを用意した。「エンドユーザーは簡単に自分のデータを使うことができる。データを動かす必要はない」(Reichen氏)

 Kazmaier氏は、「企業のデータ環境は異種混在だが、Data Warehouse Cloudにより一貫性のあるビューを得られる。データは増えており、ユースケースも増えている。一つの場所にデータを動かすのは非現実的だ。これからのデータウェアハウスは、データがどこにあっても接続でき、高速にアクセスできることが求められる」と語る。

 SAP HANAによるスピード、HANA Cloud Servicesによる仮想的なアクセス、さらにはペタバイト級のスケールシナリオにも対応できるデータレイク機能も備えるという。

 PwCは、社内でSAP Data Warehouse Cloudをプレベータ段階から使い、メリットを感じているようだ。150カ国以上で展開するPwCは、国や地域でバラバラのシステムを実装している。「SAP S/4HANA Cloud、Workday、Salesforceなどのシステムがあり、これらシステムからデータを取り出すことなく活用することは簡単ではなかった」とReichen氏はいう。顧客企業ごとに担当者がいるが、顧客の多くがグローバルに展開しており、全世界で何が起こっているのかを把握したいというニーズになかなか対応できずにいた。SAP Data Warehouse Cloudを利用することで、数日で連携の仕組みを構築したという。なお、Snowflakeなどの技術も評価したが、オープン性、拡張性などからSAPを選んだという。

 顧客向けにも展開を始めたところだが、ユースケースとしては、自社と同じようにCFO(最高財務責任者)などの経営陣が経営上必要な機能を迅速に得たいというニーズに答えられるソリューションとして位置付けている。「通常なら2年かかるようなプロジェクトだが、すぐにデータを活用できる。この短縮は大きい」とReichen氏は喜ぶ。

 SAPのKazmaier氏は、クラウドという提供方法やオンプレミスソリューションと直接接続できる点も重要な特徴になるとアピールした。

(取材協力:SAPジャパン)

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