企業間の調達をスマートに--SAPがAriba、Fieldglass、Concurを1つにする理由

末岡洋子 2019年09月12日 06時00分

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 SAPがAriba、Fieldglass、そしてConcurの3事業を一つにし、インテリジェントスペンドとして単一のプラットフォームを構築している。なぜ今なのか。狙いは何か。――SAP AribaとSAP Fieldglassで最高執行責任者(COO)を務めるJames Lee氏は、自動化と倫理の機運の高まりを挙げた。SAPが考える将来の調達はどのようなものなのか。

SAP AribaとSAP Fieldglassの最高執行責任者(COO)を務めるJames Lee氏。プロを目指していたというピアノの腕前は一流。SAP Ariba Liveイベントではピアノの演奏を披露した
SAP AribaとSAP Fieldglassの最高執行責任者(COO)を務めるJames Lee氏。プロを目指していたというピアノの腕前は一流。SAP Ariba Liveイベントではピアノの演奏を披露した

--SAPは、Ariba、Fieldglass、Concurの3事業を合体させた。その理由は何か。

 SAPは顧客へのフォーカスを最優先させており、どうやって顧客にメリットを提供できるかを考えている。

 2012年にAriba、2014年にFieldglassとConcurを買収し、これまで3つをそれぞれ別の事業として展開してきた。その間、顧客からは全てのスペンドのニーズを満たし、全体の調達プロセスを管理できる単一のプラットフォームはないか? あるいは、3つを合体させて単一にすることで利便性を高めたい、というフィードバックをもらっていた。3つは機能やインターフェースが異なり、メッセージもバラバラで、製品ロードマップも異なるため、混乱があった。また、機能の重複もあった。そこで、「インテリジェント・スペンド事業部」を立ち上げ、Concur、Ariba、Fieldglassの3つを統合した。

--インテリジェント・スペンドグループで目指すものは?

 2つのメインエリアがある。1つ目は「スペンド」の部分で、企業のプロキュアメント(資材などの調達)サイクル全体をカバーする単一のインテリジェント・スペンドプラットフォームを構築する。調達、ソーシング、契約、サプライヤー管理、実際のバイイング、カタログ、インボイス、ペイメントまでカバーする単一のプラットフォームだ。同時に、全てのスペンドカテゴリーもカバーする。Aribaは、直接・間接のMRO(保守:Maintenance、修理:Repair、稼働:Operation)スペンドをカバーし、Fieldglassはサービスのスペンド、Concurはトラベルと経費をカバーする。つまり、この3つを合わせたインテリジェント・スペンドグループは、スペンドの全てのカテゴリーがそろうことになる。

 2つ目は「インテリジェント」で、最新の技術を使って顧客がスペンドを全く新しいやり方に改善するのを支援する。技術としては、A(人工知能)I、機械学習などを使い、トランザクションが関連した作業を自動化できる。これによりプロキュアメント担当は、サプライヤーとの関係構築、予測と計画立案の改善など、戦略的なことに時間を費やせる。

--製品の統合はどのぐらい進んでいるのか。いつ実現する予定か。

 現時点では3製品はまだ統合されておらず、バラバラの製品を使う必要があるものの、最終的には統合していく。

 まだ最初の段階で、顧客が使う機能で重複しているところはどこか、どうやって3製品に顧客をオンボードできるかを見ている。最終的に1つのプラットフォームにし、顧客がログインすると、Ariba、Concur、Fieldglassの全てのデータがあり、全ての機能にアクセスできるようにする。

 どれか1つをベースに他の2製品を統合するなどのような形ではなく、それぞれの製品の強みを見て包括的なプラットフォームにする。2019年の後半に一部の統合したシナリオを提供する予定で、2020年以降も進めていく。

--SAPは先のSAPPHIRE NOWで、体験データ(Xデータ)とオペレーションデータ(Oデータ)を組み合わせる戦略を打ち出した。SAP全体の戦略から見て、インテリジェント・スペンドはどのような役割を果たすのか。

 OデータとXデータを組み合わせたインテリジェンスは、SAPの重要な戦略となる。Aribaにはトランザクション、取引先などたくさんのオペレーションデータがあり、Qualtricsのパワーを使って、新しい面を得ることができる。「サプライヤーは満足しているか」「体験のどの部分に不満を持っているのか」など、これは新しい面となる。Aribaだけではなく、Fieldglass、Concurも同じだ。

 Qualtricsは外部だけでなく、内部でも使っている。Ariba、Fieldglass、Concurの顧客は素晴らしい体験ができているのかを測定できる。どこにボトルネックがあるのかなどの情報が得られるだろう。これらをわれわれ自身も使い、継続的に製品を改善していく。

 SAPの「C/4 HANA」「S/4 HANA」とのシナジーも期待できる。SAPの強みは統合されたスイートで、SAP製品を購入すると、シームレスに接続できるインテグレーションポイントが用意されている。例えば、S/4 HANAには資材所要量計画(Material Requirements Planning:MRP)という機能がある。需要主導型で、これを直接資材モジュールと接続して、サプライヤーの予測や計画立案を改善できる。ここでのプロキュアリングの情報を土台にして、C/4 HANAの「Sales Cloud」に接続し、顧客とのやりとりを見たり、案件の状況をリアルタイムにモニタリングしたりできる。それを活用して、S/4 HANA側でサプライヤーに発注する量や製造を最適化する、といったことが可能になる。

 このように、SAPの技術を連携させて使うことで良いサイクルが生まれる。

 既に重工業では、センサーとIoTを使ってたくさんの情報を得ており、いつマシンを修理すべきかなどを予測できる。これをプロキュアメントと接続すれば、修理が必要なフォークリフトがあれば必要なパーツはどれかを調べて、Aribaを通じてサプライヤーに注文する。これをリアルタイムで自動化できる。さらには、声による操作も可能になりつつある。あるマシンが問題がある場合、Alexaを通じて注文するか提案し、担当者が承認すれば注文されるというものだ。

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