Sapphire Now

体験データで業務アプリケーションを一歩進める--SAP SAPPHIRE&CX Live

末岡洋子 2019年05月09日 15時29分

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 SAPが5月7~9日まで米国フロリダ州オーランドで開催する「SAPPHIRE NOW 2019」では、「体験」がフォーカスの1つとなった。同社は2018年にコマース、マーケティングなどフロント側のスイート「C/4 HANA」を発表したが、得意とする運用データに体験のデータを組み合わせることで何が実現するのかーーCEOを始め幹部らが語った。

SAP CEOのBill McDermott氏
SAP CEOのBill McDermott氏

 2019年のSAPPHREは30回目の開催となり、過去最大の3万人が参加登録した。7日の基調講演に登壇した最高経営責任者(CEO)のBill McDermott氏は、就任からの9年間を振り返り、「170億ドルを研究開発に当て、世界100カ国以上の男女10万人を採用した」と胸を張った。同社の革新を支えるインメモリデータベースの「SAP HANA」は3万社が利用しており、数万の顧客が最新のERP「S/4 HANA」を採用、HR(人材人事)やセールスなどのSAPのクラウドの利用者は2億人を数えるという。これらは全て”ベストランビジネスをサポートするSAP”という同社の精神に呼応する、とMcDermott氏はいう。

 このように、同氏は就任以来、SAP HANAの製品化、そしてフロント側の強化とSAP自身の変革を進めてきたが、今回の「体験」は、大きな一歩となりそうだ。

 「体験が世界経済を決める原則となっている」とMcDermott氏。だが実際には、顧客の期待と現実は異なる。80%のCEOが自分たちは優れた体験を提供していると考えているが、優れた体験を受けていると考えている顧客はわずか8%という。「このギャップによる損失は1兆6000億ドル」と同氏は見積もる。企業のトップは、体験のギャップをどうやって埋めるかを考えているという。

 SAPが2019年1月に買収を完了したQualtricsは、アンケートなどの調査を通じて、人の感情の収集と分析を行う技術を開発する。Qualtricsはこれを「体験マネジメント」と呼び、新しい分野と位置づけている。

 「体験についてのデータを収集していないというところは多い。もしあったとしてもバラバラだ」とMcDermott氏が言えば、Qualtricsの共同創業者兼CEOのRyan Smith氏は、「体験が大切という認識のフェーズは終わった。だが、従業員のフィードバック、製品のフィードバックなどはバラバラで、アクションが取れていない」と語る。

Qualtricsの共同創業者兼CEOのRyan Smith氏
Qualtricsの共同創業者兼CEOのRyan Smith氏

 Qualtricsは、「顧客」「従業員」「製品」「ブランド」の4種類の体験管理アプリケーションとその土台となるプラットフォーム「Experience Management(XM)」を持つ。データポイントは20億以上あるというが、例えば、顧客フィードバックの60%が従業員に関係しているなど、単一のプラットフォームで収集・分析することは重要だという。

 顧客がどこに不満を感じているのかーーSmith氏は、感に頼るのではなく、Qualtricsのようなツールが必要と思える話を紹介した。リピート顧客の減少に悩んでいたある高級ホテルでは、Qualtricsを利用して顧客の不満を分析したところ、「チェックアウトがスムーズじゃない」という原因が浮き彫りになった。ホテル側は顧客維持のためには新しいスパを作る、レストランをリニュアルするなどの対策が必要と思っていたが、「簡単なところに改善点があった」というのだ。

 Qualtricsと相性が良いのが、マーケティング、コマースなどのアプリケーションで構成される「C/4 HANA」だ。SAPPHIREとは別会場で開催されたC/4 HANAのイベント「SAP Customer Experience Live」では、SAPのMarketing CloudとQualtricsを連携させ、Qualtricsのフィードバック情報とMarketing Cloudにある顧客の行動データなどを組み合わせて不満を汲み取り、最適なキャンペーンを送るというデモを見せた。

 Smith氏はQualtricsが収集するデータを感情のデータ(X-data)、SAPが収集するデータを運用データ(O-data)としながら、「体験データと運用データを組み合わせることでギャップを解消できる」という。QualtricsはSAP買収が決定する前にIPOをする直前にあったが、SAPとの相性の良さを感じてSAPとの合体を選んだと明かした。

 QualtricsのXMは現在1万社が利用しており、この中にはUnderArmourなど、既に両社を採用している企業もいるという。体験データへの価値が認識されてか、「毎四半期500社の新規顧客が加わっている」とSmith氏は明かした。

 C/4 HANA事業を率いるSAP Customer ExperienceプレジデントのAlex Atzberger氏は、「SAPは過去40年、運用データの収集を得意としてきた。世界のトランザクション75%が何らかの形でSAPを経由している。Qualtricsにより感情データが加わることで、より深く、リッチに顧客を理解できる」と述べる。

SAP Customer ExperienceプレジデントのAlex Atzberger氏
SAP Customer ExperienceプレジデントのAlex Atzberger氏

 そして、“並み”ではなく“最高”の顧客体験を提供するためには、(1)パーソナライズ、(2)信頼、(3)タイミングの良いデリバリー、(4)共感、(5)エンゲージの5つが必須として、それを実現するためにサイロではなく1つのプラットフォーム、スイートに統合する必要があるとし、C/4 HANAの重要性を強調した。

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