Salesforceは数年前に人工知能(AI)プラットフォーム「Einstein」を導入して以来、さまざまなツールにAI機能を搭載してきている。例えば「Dreamforce 2019」カンファレンスにおいて同社は、音声アシスタントをカスタマイズするツールや、コールセンターにAIをもたらすツールを新たに発表した。これらの新機能を見ると、同社が顧客の作業を容易にしようと、段階を踏みつつ、意欲的に取り組んでいるのが分かる。
Dreamforceの参加者に対して同社製品の先進的な考えを見てもらうために、Salesforceのリサーチチームは対話型AIや自然言語生成といった分野でのブレークスルーのいくつかをデモして見せた。SalesforceのチーフサイエンティストであるRichard Socher氏によると、彼らのリサーチは、現在のところSFの世界でしか見られない、AIによって動かされる世界を構築することに焦点を当てているという。
同氏は、「われわれはこういった未来を予測しようと注力しており、未来を予測する最善の方法は自らで未来を作り上げることなのだ」と述べた。
同社のリサーチ部門は4つの下位部門で構成されている。それらは基礎研究部門と応用研究部門、新製品のインキュベーション部門、AIプラットフォーム研究部門だ。Socher氏によると、このような体制になったのはわずか数年前のことであり、以前はAIの基礎研究にのみ注力していたという。基礎研究部門と応用研究部門の取り組みにより、できることと、必要であるものごとが浮き彫りになる、同氏が呼ぶところの「ポジティブなサイクル」が生み出されるという。
例えば、Salesforceの上級リサーチサイエンティストであるVictoria Lin氏は、リレーショナルデータベースに対するクエリーを音声アシスタントを使って実行して見せてくれた。
同氏は「企業におけるデータの多くは、リレーショナルデータベース上に存在している」と述べ、こういったデータから洞察を得るには、「SQLのようなクエリー言語を知っておく(中略)あるいはアナリストチームにレポートを作成してもらわなければならないのが一般的だ」と続けた。
Lin氏のリサーチは、自然言語によるクエリーを解釈し、SQLのクエリーに変換するまでのエンドツーエンドのニューラルネットワークの訓練に焦点を当てたものとなっている。
Lin氏は「これはデータの民主化に向けた大きな1歩だ」と述べ、「データエントリーの終焉(しゅうえん)であり、データカンバセーションの始まり」に向けた動きだと続けた。