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水中データセンターからゼタバイト級メディアまで--マイクロソフトの研究開発

阿久津良和

2019-12-18 12:01

 日本マイクロソフトは12月17日、近年発表した最新技術に関する説明会を開催した。同社の研究開発担当者らが多岐にわたるテーマでの取り組みを紹介した。

 Microsoftの研究開発部門「Microsoft Research(MSR)」は、その設立のきっかけとなったのが、ClearTypeやWindows Mediaの開発に携わり、当時CTO(最高技術責任者)だったNathan Myhrvold氏だ。

 日本マイクロソフトの執行役員 CTOでマイクロソフトディベロップメント代表取締役社長を務める榊原彰氏は、「Bill GatesがCEO(最高経営責任者)だった時代、Myhrvoldの『基礎研究に取り組み、未来のテクノロジー開発で社会に貢献すべき』との意見に賛同してスタートした。たとえMicrosoftの売り上げが伸びなくても、MSRは独立した研究予算を保障することを確約させた。今でもその文書が残っている」と話す。

日本マイクロソフト 執行役員 最高技術責任者 兼 マイクロソフトディベロップメント 代表取締役社長の榊原彰氏
日本マイクロソフト 執行役員 最高技術責任者 兼 マイクロソフトディベロップメント 代表取締役社長の榊原彰氏

 現在、MSRの研究開発関連への年間投資額は120億ドル(約1.3兆円)に上る。CEOがSatya Nadella氏に代わっても方針は変わらないが、同社のビジョンに沿ったプロジェクトの優先順位が加わっているという。なお、MSRの責任者はAI研究を統括していたHarry Shum氏が2020年に退社する予定のため、現在は元Linkdin CVPのKevin Scott氏が務めている。

 Microsoft Azureに関しては、現在140カ国で55のリージョンを展開し、リージョンによって可用性が異なるという。通常のデータセンターは「Availability Region(AR)」と称する。電源や空調設備を独立させることで可用性を担保した「Availability Zone(AZ)」は米国の西部や東部、西欧、日本の東日本リージョンが該当する。通常、顧客は事業拠点に近いリージョンを選択するが、事業継続性や早期の災害復旧を必要とする顧客は複数のリージョンを組み合わせて利用する。同社はデータセンターの拡張に毎年7000~8000億ドルを投じ、拡大を続けているという。

米国バージニア州にあるMicrosoft Azureのデータセンター。楕円で囲んだのが2014年当時の様子
米国バージニア州にあるMicrosoft Azureのデータセンター。楕円で囲んだのが2014年当時の様子

 桁外れの電力を消費するデータセンターは常に電力問題が付きまとう。この課題を解決するため、風力や太陽光に代表される再生可能電力に注力している。「究極的には100%の自然電力で賄うことを目指している」(榊原氏)とし、その一環でMSRが2015年から取り組むのが「Project Natick」だ。

 米カリフォルニア沖の海中にデータセンターを沈めることで、消費電力や二酸化炭素排出など多くの課題を解決する取り組みだが、現在はフェーズ2にあり、スコットランドの沖合で実験中。40インチと12インチのラックを12台のコンテナーに積み込み、90日以内に展開した後は5年間の検証を続けるという。水中にデータセンターを設置するメリットとして榊原氏は、酸素の代わりに窒素を詰めることで腐食の抑制や安定冷却、空気中の粒子状物質による汚染の回避が可能になると説明した。なお、現時点で電力は地上から引き込んでいる。フェーズ3ではコンテナーを複数化し、「サッカーグラウンドに近いコンテナのセットを沈めてクラスタリング運用に挑戦する」とのことだ。

Project Natickの様子
Project Natickの様子

 「Microsoft Ignite 2019」では、Azure Stackポートフォリオなど多くの発表が行われたが、注目されるのは「Project Silica」だろう。英サウサンプトン大学とMicrosoftが共同研究した一片25mm程度のガラスに、100fs(フェムト秒)のパルス幅で発振するレーザーで3Dにデータを書き込む。これにより、ゼタバイト級のデータを格納するメディアを実現する。榊原氏は「沸騰したお湯やフライパン、レンジで焼いても破壊できない熱耐性を持つ。ただ、ハンマーなどの直接的な衝撃には弱く、われわれはデータセンターのコールドストレージとして利用する」と解説し、大量生産が間近であると説明した。

Project Silicaの概要。記録したデータの寿命は1000年級といわれている
Project Silicaの概要。記録したデータの寿命は1000年級といわれている

 また、Ignite 2016で発表されたMSRとケンブリッジ大学の共同研究成果になる「Project InnerEye」も注目される。通常の放射線医療は、撮影画像の抽出を人手に頼っているため、高コストかつ正確性も欠くことが多いという。

 同プロジェクトは、放射線治療の対象となる患部のマーキングに、「Deep Decision Forests」と呼ばれるアルゴリズムとCNN(畳み込みニューラルネットワーク)」を用いることで、精確な治療を可能にするとされた。榊原氏は、「信頼に基づいて成立するソリューション。パートナーとも情報の扱いに気を付けて取り組んでいく」と説明した。既に医療量画像システムを手掛けるTeraReconや、医療支援ロボットシステムを提供するIntuitiveがパートナーに名を連ねているとした。

放射線画像の測定にコンピューティングパワーを使うProject InnerEye。GPUを必要としないため低コスト化が可能
放射線画像の測定にコンピューティングパワーを使うProject InnerEye。GPUを必要としないため低コスト化が可能

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