本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、インテルの鈴木国正 代表取締役社長と、日本IBMの纐纈昌嗣 執行役員の発言を紹介する。
「これからは企業の“DcX”を強力に支援していきたい」
(インテル 鈴木国正 代表取締役社長)
インテルの鈴木国正 代表取締役社長
インテルが先頃、2019年の活動の振り返りや今後のビジネス展望などについて記者説明会を開いた。鈴木氏の冒頭の発言はその会見で、これからは「データセントリックトランスフォーメーション」(同社は「DcX」と略している)に注力する企業を支援していくことを強調したものである。
DcXは、その名から言えば「データを中心に変革を進めていく」と読み取れるが、鈴木氏によると、この言葉には同社の重要なメッセージが込められているようだ。
「データセントリックトランスフォーメーションというと、言葉遊びのように聞こえるかもしれないが、私たちとしては今、盛んに使われているデジタルトランスフォーメーション(DX)が意味する範囲をもう少し狭めた形で捉えている。私たちの解釈では、DXは例えば企業の基幹システムの刷新なども含まれているが、DcXはとにかくデータを中心に考えてどんどん攻めのビジネスを行っていく活動に絞った形のメッセージとして発信していきたい」
こう話した鈴木氏は、図を示しながらDcXの背景について説明した。それによると、まず図の左側はデジタルデータの生成量の時系列推移を示したグラフである。ポイントは、ウェブ/モバイルやIoT/アナリティクスが生み出す非構造化データが今後、急増していくということだ。このグラフでは2020年におよそ60%に達するとの見立てだ。
データセントリックトランスフォーメーションの背景
また、図の右側に示されているのは、データ中心へと移行するにあたり、テクノロジーのトレンドとして重要な3つのポイントである。「多様なコンピューティングへの対応」「ネットワークのクラウド化」「インテリジェントエッジ」がそれだ。
鈴木氏は、特にエッジについて、「3、4年後にはデータを処理するところとして、クラウドとエッジが半々の割合になるともいわれていることから、エッジ側で適切なデータの処理を可能にするインテリジェットエッジという考え方が非常に重要になってくる」との見方を示した。
その上で同氏は、「今後、企業はデータを十分に活用しているか否かで、競争力に大きな差が生まれることになるだろう。私たちとしては、データを活用して競争力を高めていく企業がどんどん増えていくように支援していきたい」との意気込みを示した。
ちなみに、DcXはインテルがグローバルで使っている言葉ではなく、日本法人独自のメッセージで、「今回の会見で初めて使った」(鈴木氏)という。そこには「日本企業にとってDcXが大きな課題となっている」(同)との問題意識がある。DcXに向けた日本法人独自のビジネス展開に注目していきたい。