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山谷剛史の「中国ビジネス四方山話」

2019年の中国IT事情を振り返る--2020年の見通しは?

山谷剛史

2020-01-20 07:00

 中国メディアは年末だけでなく、年始にも前年を振り返りがちだ。もっとも、年末までしっかり見届けた方が正しい振り返りができるので悪い話でもないだろう。2020年が明けて、さまざまな振り返り記事が出そろったところで、改めて2019年の中国IT事情がどうだったかを紹介する。

 大きな話題で言えば、まずは2019年5月の“ファーウェイ危機”だろう。米国商務省が華為技術(ファーウェイ)製品の販売を禁止したことを発端に、Intel、Microsoft、Googleなども足並みをそろえてファーウェイを規制対象にした。若干の猶予があったおかげで、既に販売されたスマートフォンやタブレットの海外向けモデルではGoogle系のサービスを使用できたが、その後のモデルでは利用できなくなった。

 ファーウェイ系列の海思半導体(ハイシリコン)はSoC「Kirin 980」を開発。独自OS「鴻蒙」を搭載したスマートテレビもいち早くリリースされた。同社は米国製品が利用できないことを想定し、そのシナリオ通りに対応した。ファーウェイ叩きの報道が連日ある中、ファーウェイのスマートフォンは国内出荷シェアの4割超を得るほど売れた。

 モノづくりでは、電子タバコ市場での創業ラッシュが2019年前半まで続いた。ただ、米国では電子タバコの健康性が疑問視され販売が禁止になっている。中国でも11月11日の「日双十一(独身の日)」セールを直前に、EC(電子商取引)サイトでの電子タバコの販売が禁止となった。完全に禁止というわけではなく、実店舗での販売は継続される。とはいえ、ECサイトでの販売禁止は業界全体に大きなマイナス影響を与えた。その結果、2019年後半には電子タバコのベンチャー企業で新たに資金を調達したという話をほぼ聞かなくなった。

 モノづくりに限らず、2019年のベンチャー・スタートアップ界隈は、コーヒーチェーンの瑞幸珈琲(ラッキンコーヒー)が上場した以外は暗い話題が多かった。これまでシェアサイクルや無人コンビニなどのサービスが登場してきたが、投資件数は減少している。小規模のネットスーパーも資金不足でサービスを停止したところが多い。生き残っているネット企業大手においても、ブラック残業問題「996(朝9時から夜9時まで週6日の勤務)」が話題となった。

 IT企業が実に厳しい状況に置かれる一方で、消費者や個人のレベルでは必ずしも暗い話題ばかりではなかった。

 まずはショートムービーの「TikTok」(中国版は抖音)と「快手」(クアイショウ)、それに阿里巴巴(アリババ)のライブコマースサービス「淘宝直播」(タオバオライブ)により、一気にライブコマースが普及した。これは買い手だけではない。ライブ配信によりモノが飛ぶように売れるという成功者の話を聞いて、多くの人がライブコマースでの商品販売に意欲を見せた。かくいう筆者にも、日本の商品をライブコマースで売って一儲けしようという声が複数の知人からかかった。IT従事者でなければIT不況はどこ吹く風で、今こそ金儲けのときとばかりに彼らの表情は明るかった。

 また第5世代移動体通信システム(5G)の商用利用が11月1日に始まり、年内までにファーウェイから7機種、vivo(ビボ)から4機種、小米(シャオミ)から2機種、OPPO(オッポ)から1機種が発売された。2020年に発売される機種の多くは5G対応になるだろう。

 中国での4G時代を振り返ると、通信料金の値下げもあって、個人がスマートフォンで高速通信を利用する初めての時代だった。人々が費用を気にせずスマートフォンやインターネットを利用できるようになったことで、外出先でも口コミサイト「美団」(メイタン)で飲食店を探したり、配車サービス「滴滴」(ディディ)でタクシーを呼んだりといった「O2O(Online to Offline)」が普及した。

 またそれに伴って、QRコードによるキャッシュレス決済や、シェアサイクルやシェアバッテリーなどのシェア系サービスが普及した。またネットスーパーやニューリテールも人々に認知された。

 では、5G時代はどうなるのだろうか。5Gは超高速、低遅延、多接続を特徴とし、モノ同士がインターネットでやりとりをするIoT普及の鍵になる。実際、いま中国のスタートアップやベンチャーで最もよく聞くのが、病院やオフィス、物流現場などにIoT製品を導入してスマート化を図るという話題や、オフィスや製造工場向けのSaaSを提供する企業についてである。IoTをふんだんに使った自動運転車のニュースもよく目にする。5Gで成長する分野に投資が流れるのは自然なことだ。アリババやファーウェイなどの大手企業はAIチップを開発するなどして、クラウドでの処理速度の向上を進めている。

 となると、2020年もしばらくの間、中国の街中で消費者の心に訴え掛けるようなハイテクサービスは見られないだろう。せいぜい自動運転車くらいだろうか。その一方で、5G通信の活用に向けて、企業や病院、倉庫などでじわじわと対応する製品・サービスが出てきて、気がついたらビジネスの生産性が大きく向上していたということもあるだろう。消費者の視点では、またしばらくライブコマース熱が残っており、これで一山当てようという動きも見られるだろう。

山谷剛史(やまや・たけし)
フリーランスライター
2002年から中国雲南省昆明市を拠点に活動。中国、インド、ASEANのITや消費トレンドをIT系メディア、経済系メディア、トレンド誌などに執筆。メディア出演、講演も行う。著書に『日本人が知らない中国ネットトレンド2014』『新しい中国人 ネットで団結する若者たち』など。

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