中国では、ブランド商品などに偽造防止用の特殊なシールが貼り付けられている。このシールは、二次元コードとスクラッチ部分で構成されており、二次元コードをスキャンしてメーカーのウェブサイトにアクセスし、スクラッチ部分をコインでこすって表示される番号を入力することで、購入した商品が正規品かどうかを確認できるようになっている。これによって消費者が本物の製品と偽造品や劣質品を簡単に見分ける手助けとなり、信頼できるブランドであることを示すと同時に、偽造品でないという安心感を提供する。結果として、ブランドの信頼性が向上し、顧客の流出を防ぐ効果が期待できる。
しかし、その偽造防止シールに偽物が出回っているとの指摘がある。つまり、偽物のスクラッチシールが貼ってあり、そこから読み取ってアクセスする「中国製品情報チェックセンター」や「中国商品偽物防止チェックセンター」などと称するウェブサイトも偽サイトである可能性がある。こうした二次元コード付きシールなどはECサイトで購入し、カスタマイズできると、中国中央電視台(CCTV)などが3月に報じている。
こうした話は最近に限ったわけではなく、10年ほど前からぽつぽつとあった。消費者センターに寄せられた苦情は1000件を超えているが、全体の案件数としてはそれほど多いわけではない。メーカーは偽造防止シール自体が不正されないように新たな技術を導入しているが、どうやらその努力は“いたちごっこ”のようだ。
自分で使用する電化製品や日用品、化粧品、応援する作家の書籍、愛犬のペットフードなどを選ぶ際にも、商品が本物であるかどうかを確認するためにシールの有無が重要になる。さらに、消費者向け製品だけでなく、機械部品のパッケージなどにも、安全性を保証するためにシールが貼られていることがある。
その商品のヘビーユーザーやリピーターであれば、印刷のぼやけや質感の違いなど、何か普段と異なる点に気づき、偽造品であることを見抜けるかもしれない。二次元コードからアクセスしたウェブサイトに疑問を持ち、メーカーに直接問い合わせをしたり、ユーザーコミュニティーで画像を共有したりすることで、商品自体や偽造防止シールが偽物であると明らかになることもある。中国のECでは、問題のある商品を返品することは可能だが、偽物を販売したとして返品を求めても拒否されるケースもある。そのような場合、消費者は黙って被害を受け入れるのではなく、プラットフォーム側に連絡を取ることで、返品手続きを強制的に進めることができる。
CCTVでは、顧客になりすますことで、偽造防止シールを提供する業者から話を聞いている。ある業者は「最低5万枚から作成可能」と述べ、別の業者は「1万枚で1000元(約2万円)、5万枚で1500元(約3万円)」という価格を提示した。さらに、「適切な業者選びには注意が必要だ。われわれは適切な設備と技術を有しているが、単にOEMを探すだけの業者も存在し、そのような会社からは高い品質を期待できない」と語る。また、企業ロゴ入りの偽造防止シールなどのカスタマイズには「追加で400元(約8000円)が必要」としている。
専門家によると、現在は関係する機関や団体が多く、一般の消費者には判別できない」とした上で、偽造防止やトレーサビリティーを目的とした機関が商業的な方法で運営されているため、本来の目的に反していると指摘している。
企業側にも対策が全くないわけではない。例えば、粉ミルクメーカーでは、偽造防止シールを導入するだけでなく、独自のポイントプログラムと組み合わせて、偽造対策を強化しているところもある。
- 山谷剛史(やまや・たけし)
- フリーランスライター
- 2002年から中国雲南省昆明市を拠点に活動。中国、インド、ASEANのITや消費トレンドをIT系メディア、経済系メディア、トレンド誌などに執筆。メディア出演、講演も行う。著書に『日本人が知らない中国ネットトレンド2014』『新しい中国人 ネットで団結する若者たち』など。