顧客が提供する“ゼロパーティーデータ”を活用せよ--新製品で再始動のチーターデジタル

末岡洋子

2020-01-20 16:27

 顧客エンゲージメントソリューションを提供するCheetah Digitalは1月17日、マーケティング基盤「Cheetah Digital Customer Engagement Suite」の国内提供を開始すると発表した。米国本社から幹部が来日したほか、日本で電通デジタルと戦略的提携を結んだことも発表された。

 同社の創業は20年以上前にさかのぼる。これまでメールマーケティング製品を提供してきたが、2019年11月にマーケティングプラットフォーム事業を分割。同年12月には、日本法人の経営体制を刷新した。新たに日本法人を率いるのはカントリーマネージャーの公家尊裕氏、それに副社長兼最高執行責任者(COO)の白井崇顕氏、副社長兼最高マーケティング責任者(CMO)の加藤希尊氏。3氏は、GitHub、Salesforceなどの外資系企業の日本法人で幹部を務めてきた人物。

 来日したCheetah Digital 最高経営責任者(CEO)のSameer Kazi氏は、パートナーであるPeter McCormick氏(Salesforce.comが2013年に買収したExcat Targetの創業者。現在、Cheetah Digitalの取締役会会長を務める)とともに、2017年にExperianから現在のCheetah Digitalの土台技術を獲得した。その理由について、「イノベーション、マーケターが必要とする専門知識、マーケターが本物の成果を出すこと――。この3つで市場にはギャップがあった。Cheetah Digitalは、企業が本当に顧客を理解するための技術を提供する」と述べた。そして、市場の大きなテーマとして「リアルタイムのデータとデータ管理」「UtoK(Unknown to Know:未知の顧客から既知の顧客へ)」「ライフサイクルとロイヤリティー」の3つを挙げ、同社の技術で実現していくとした。

Cheetah Digital CEOのSameer Kazi氏
Cheetah Digital CEOのSameer Kazi氏

 今回日本で展開を開始するCheetah Digital Customer Engagement Suiteは、データ基盤「Cheetah Engagement Data Platform」を土台とし、データ収集の「Cheetah Experiences」、マーケティングコミュニケーションの「Cheetah Messaging」、顧客関係管理の「Cheetah Loyalty」で構成される。製品の日本語対応はほぼ完了しており、データセンターも国内に構築済み。2020年前半には、カスタマージャーニー、オーケストレーションの「Cheetah Journey Designer」もリリース予定だ。機械学習を利用して、次にとるべきアクションをレコメンドするなどが可能になるという。

 特徴は“ゼロパーティーデータ”と呼ぶ、顧客自らが提供するデータを収集・活用できることだ。ゼロパーティーデータはForrester Researchが提唱する考え方で、顧客のみが持っている情報と定義されている。これを収集するに当たって、Cheetah Digitalが活用するのがスワイプ技術だ。「普段どのように健康維持に努めていますか?」「どのぐらい重要ですか」など習慣や嗜好を探る簡単な質問と回答を選択肢に用意し、ユーザーはタップして回答し、スワイプして次に進む、という形で進めていく。クイズ形式、プレゼント、SNSフィード、フォーム、コンテストなどをテンプレートで用意しており、すぐに活用してファーストパーティーデータを収集できるという。「インタラクティブなスワイプテクノロジーにより、顧客と対話しているような感覚でデータを収集できる」(チーターデジタル シニア クライアント サクセスマネージャーの根本みわ氏)は説明する。

ゼロパーティーデータについて
ゼロパーティーデータについて

 ゼロパーティーデータとは顧客が自ら進んで提供するデータ。セカンドパーティー、サードパーティーなどの外部データは欧州による一般データ保護規則(GDPR)などの規制により利用が難しくなっている。チーターデジタルは“ゼロパーティ”として、顧客が自ら提供するデータの収集と活用を差別化とする。

 デモとして、ヨガクラスの無料体験キャンペーンでポスターのQRコードを見たユーザーが、QRコードをスキャンしてヨガクラスのサイトに行き、簡単な質問に答えると体験キャンペーンに申し込むというデモを見せた。ユーザーが回答すると即座にEngagement Data Platformにも反映されるため、ユーザーのエンゲージメントをリアルタイムに把握して、ユーザーの好みのチャネルを使ってエンゲージメントを深めることができるという。

Engagement Data Platformで表示したユーザーのプロファイル画面
Engagement Data Platformで表示したユーザーのプロファイル画面

 米国では動物専門テレビチャネルのAnimal Planetが2月のスーパーボウルに合わせて、「Puppy Bowl」というキャンペーンをCheetah Digitalの技術を使って作成した。スワイプ技術を使い、名前やメールアドレスなどの基本的な情報だけでなく、ペットの名前、好きなペットフードなど深い情報の収集に成功しているという。「ゼロパーティーデータを多く収集することで、企業は顧客との距離を縮めることができる」(根本氏)

 また、米国のランニングシューズフランチャイズのFleet Feetは、“ランナーの目的を一緒に達成すること”というビジョンに合わせた新しいマーケティングをCheetah Digitalの技術を用いて構築した。アプリユーザーがランニングやウォーキング活動を記録すると達成度に応じたリワードを提供したり、コミュニティーパートナーのヨガやジムのクラスに参加するとリワードを提供したりすることで経済圏を活性化させた。また、ランニングに関する知識を問うクイズを用意し、ゼロパーティーデータの取得も行っているという。その結果、9カ月で300万人の登録があったとのことだ。

 この日は、導入を決定した顧客として、カタログ通販大手のディノス・セシールで最高Eコマース責任者を務める石川森生氏が登壇。「新規のお客さまが2回、3回と購入してもらえるように顧客リストを作成し、リテンションツールを使って利益を回収していくモデルを半世紀以上とっている」という同社、ゼロパーティーデータは「顧客の“解像度”を上げることができるデータになり得る」と期待を寄せた。

ディノス・セシールの石川森生氏(右)とチーターデジタルの加藤希尊氏(左)
ディノス・セシールの石川森生氏(右)とチーターデジタルの加藤希尊氏(左)

 また、日本における戦略パートナーとして電通デジタルとの協業も発表した。電通デジタルのデータ/テクノロジ領域 担当執行役員の小林大介氏は、チーターデジタルとの提携に至った背景として「原点回帰」を挙げた。データの取り扱いについて、規制と消費者の考えの両方で変化が起きていることを背景に挙げながら、「企業自身が顧客としっかり向き合って、素敵な体験を提供し、それを通じて顧客から喜んで情報を提供してもらう、それが良い体験につながる。ある種のCRMの原点回帰が、2020年に起こるのでは」と述べた。

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