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歴史的な危機でもデジタル変革に衰えはなし--アビーム新社長の鴨居氏

國谷武史 (編集部)

2020-04-16 06:00

 4月1日付でアビームコンサルティングの代表取締役社長に就任した鴨居達哉氏は、新型コロナウイルス感染症が世界経済や企業に深刻な影響をもたらす中でもデジタル変革(DX)の勢いは決して衰えないだろうと話す。現在の状況や今後の展望を聞いた。

--まず、新型コロナウイルス感染症の影響はどのような状況でしょうか。

アビームコンサルティング 代表取締役社長の鴨居達哉氏。1983年上智大学外国語学部卒。セイコーエプソン、プライスウォーターハウスクーパース、IBMビジネスコンサルティングサービス、米IBMを経て、2006年日本IBM執行役員、2012年日本IBM常務執行役員、2014年マーサージャパン代表取締役社長兼 Mercer Far East Market Leaderに就任。2019年10月にNEC入社、シニアコーポレートエグゼクティブに就任。20年以上にわたり国内外のグローバル企業のコンサルティング、IT構築の推進に従事。
アビームコンサルティング 代表取締役社長の鴨居達哉氏。1983年上智大学外国語学部卒。セイコーエプソン、プライスウォーターハウスクーパース、IBMビジネスコンサルティングサービス、米IBMを経て、2006年日本IBM執行役員、2012年日本IBM常務執行役員、2014年マーサージャパン代表取締役社長兼 Mercer Far East Market Leaderに就任。2019年10月にNEC入社、シニアコーポレートエグゼクティブに就任。20年以上にわたり国内外のグローバル企業のコンサルティング、IT構築の推進に従事。

 世界的にここまで刻々と状況が変わる事態になるとは、誰も予測していなかったと思います。企業でもプロジェクトの開始を少し遅らせたり、規模を縮小したりとする状況が少しずつ確認され始めています。

 一般的な言い方ですが、私がなすべきは、変化に応じて迅速に対応することだと思います。社員と家族が健康で安全に状況と向き合えることが第一ですし、まずはその対応を徹底してきました。コンサルタントは場所を問わずどこでも働けます。ITの仕組みも整備しています。基本的に平時もリモートワークですが、これが会社の管理部門となると、ちょうど年度末の決算期と重なり難しいところもあります。これは顧客やパートナーも同様ですので、きちんと進められるように努めています。

 ただ、例えば5月の連休後や7月といったタイミングで終了するプロジェクトもあり、非常に厳しい納期の中で対応を進めなければなりません。人員が密集するプロジェクトルームではなく分散して自宅などでの作業を推奨する顧客もいます。このような状況では、顧客に応じて対応を変えていかなければなりません。簡単に言えば、変化を早く、適切につかむことです。顧客と面談ができない、顧客の主要な部門が全て在宅勤務であるなど難しい部分もありますが、メールやビデオ会議などを使って顧客の状況を常に把握し、佳境を迎えて止められないプロジェクトでは人材を迅速にアサインしていくなどの対応をしています。

 しかし、変革に向けた顧客のコミットメントの勢いが衰えるとは思いません。新型コロナウイルス禍の以前から、多くの顧客が事業環境の変化や仕組み、プロセスを変えていかなければならないと考え、重要な変革期にあると認識していたからです。一時的なスローダウンはやむを得ませんが、もっと大きな変革を目指す歩みが根本から変わるようなことではありません。もう少し効率的にする、規模を少し縮小する、スケジュールを見直す、といったことはあるでしょうが、私たちは顧客の変化をしっかり支援していきます。

--日本企業のデジタル変革(DX)の取り組みをどう感じていますか。

 新型コロナ禍の以前からコンサルティング会社に対する期待値が変わってきたと感じていました。例えば、平成の約30年間は日本の国際競争力に苦しんできた時期でした。それでも企業は積極的に変革を推進してきたのです。国内市場にとどまることなくグローバル市場に進出し、買収など野心的に取り組んできました。コンサルティング会社もまた、それに応じて規模を拡大し、成長をしてきましたが、日本企業が必要としてきた変革に寄与してきたとも言えます。さらに競争力を高めなくてはならないという状況で、企業はコンサルティング会社をより使っていこうという意識が強まっているように思います。

 私たちには、SAPの基幹システム導入に関する深い専門性がありますが、これは今後も幹として残ります。さらに、変革に向けた経験値やプロジェクトマネジメントのような方法論、専門性と能力のある人材がコンサルティング会社の強みになります。顧客企業にとってコンサルティング会社は、変革への取り組みを一緒に歩むパートナーですが、同時に結果を出すまではコストでもあります。ですから、これからの顧客企業がコンサルティング会社に求めるのは、本当に一緒に価値を創造できるのかどうか、価値共創のパートナーであるかということです。

 現代は変化のスピードがとても激しく、そのサイクルも早いのです。現在の新型コロナ禍は極端ですが、2020年の初頭に経済へ影響を与えるものは、米中対立など政治的な一国主義でしたが、現在(2020年4月)では誰もそのような指摘をしていませんし、欧州では国別の動向に関心が集まり「EU」という言葉すら聞かなくなりました。それぐらい現在の変化は激しいのです。

 こうなると顧客も変化の方向性をどこに定めるかが難しくなります。3~5年先を見据えていたはずが3~6カ月で変わる可能性もあるわけですから、自社がこの先どのように変化していくべきか、つまり変革の方向性をどう設定するかが極めて重要になります。当然ながら現時点で未来の姿がどうなるかは分かりません。設定した方向性に進む中で幾つかの方法を試行錯誤します。そこが価値創造のポイントになります。

 試行錯誤をするにはソリューションも必要ですので、コンサルティング会社の中に一定のよりどころとなる技術や資産が必要です。その周辺で異なる技術を持つようなパートナーシップや資本的な協力、スタートアップの支援などによってソリューションの幅が広がります。選択肢が多くなれば、ソリューションを設計するアーキテクトも重要です。

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