法務部門に寄せられる相談をナレッジ化できる契約マネジメントの有効性 - (page 2)

酒井貴徳 (Holmes) 須貝崇史 (Holmes)

2020-04-27 07:00

ナレッジの活用方法

 登録したナレッジは、いくつかの方法で活用することができる。

1.ナレッジの検索・管理

 一つ目は、ナレッジ自体をカテゴリ分けして管理したり、検索をかけて目的のナレッジを探したりするという方法だ。

 ナレッジのカテゴリは、先述した相談カテゴリに対応しているため、わざわざカテゴリ分けを気にする必要はない。例えば、「トラブル対応」というカテゴリで相談を受けつつ、再発防止のために展開しておくべき回答をナレッジとして溜め込んでいく。新たに何らかのトラブルが発生したり、トラブルの予防をしたいと考えたりした場合には、「トラブル対応」のカテゴリに入れば、過去に対応したトラブルについてのナレッジを横断的にチェックできる。

 秘密保持契約(Non Disclosure Agreement:NDA)について知りたいと考えた場合には、そのまま「秘密保持契約」でナレッジを検索することができる。関連するナレッジをカテゴリに関係なくピックアップできるため、見落としなくナレッジのチェックをすることが可能だ。

2.ナレッジの紐付けによる活用

 二つ目は、ナレッジをそれ単体としてではなく、契約書の雛形や契約関連業務に紐付けて活用する方法だ。

作成時にナレッジを活用できる(出典:Holmes) 作成時にナレッジを活用できる(出典:Holmes)
※クリックすると拡大画像が見られます

 例えば、秘密保持契約に関するナレッジが新たに登録されたとしよう。このナレッジを、ホームズクラウドに登録してあるテンプレート(雛形)に紐付ける機能がある。テンプレートを用いて契約書を作成するときに「このテンプレートに関するナレッジがありますよ」とアラートが出るようになるため、ナレッジを探しに行くという行為が不要になる。せっかく作ったナレッジも活用されなければ意味がない。契約書を作成していく段階でナレッジがあると分かれば、気軽にナレッジに触れ、法務担当でないメンバーにもリーガルマインドの要素を自然な形で伝えることができる。

 これは契約書の雛形に限らず、関連業務に紐付けることもできる。例えば、前回紹介したプロジェクト管理機能で、関連契約を一元的に管理するケースだ。新規の取引先と取引を開始する際に、「取引契約を結ぶときには先にNDAがあるか確認し、相互に衝突しないか◯◯と××の条件についてチェックを求めること」などといったナレッジを紐付けておいて、注意喚起を促すことができる。

それぞれの企業に合った形の「契約マネジメント」を

 契約、法務業務の視点で考えた時に外すことのできない相談業務をカバーできるホームズクラウドは、契約プロセスで使われる様々な書類やツールを一元化できる。単に“使うツールが減って楽になる”だけではなく、契約に関するやり取りや経緯を全て一つにまとめることができる。これにより、後から振り返るのが容易になり、社員相互の情報交換がしやすくなるだけでなく、業務の属人化を防ぐことも可能になる。これまで、他の業務領域はどんどんシステム化が進んでいるが、契約領域はそうではなかった。契約業務をシステム化して、企業が持っているポテンシャルをさらに引き出すことができるのがホームズクラウドだ。

 とはいえ、ツールを導入しただけでは、社内の仕組みを変えることは難しい。なぜなら、ツールを使うのは結局のところ「人」であり、「誰が」「何を」「いつ」「どのように」使うのかという運用面を見直さなければ、真に生産性を最大化させることは不可能だからである。運用面を見直さずにツールを導入するだけでは、ツールに振り回されるだけで本末転倒な結果になりかねないのだ。ましてや、電子契約が普及し始めているとはいえ、紙が一切消え去るわけではない。契約業務のオペレーションは、紙と電子が混在せざるを得ず、そのフローは複雑になりがちだ。

 それぞれの企業によって、最適な契約マネジメントというのは異なる。なぜなら、企業の契約業務というのは、扱う契約類型や企業体制、企業文化などの様々な要因が影響し合っているからである。したがって、自社で契約マネジメントを実践しようとする場合には、まず現状の業務フローを洗い出し、どんな契約プロセスを構築し、契約管理を進めればいいのかを分析することが必要不可欠である。これは、電子契約のシステムを導入しようとするときも変わらない。

 次回は、これまでに蓄積したノウハウを活用してHolmesが行っている、それぞれの企業に合った契約マネジメント支援と、前回の記事で予告をしたライフサイクル管理の手法と合わせて、これまでに解説してきた内容の総まとめを予定している。

(第6回は5月下旬にて掲載予定)

酒井 貴徳
Holmes CEO室 室長

日本、ニューヨーク州で現役弁護士を務める。2009年に東京大学法科大学院修了後、2010年に弁護士登録(第2東京弁護士会、63期)。2011年から、西村あさひ法律事務所でM&Aやスタートアップ支援を担当。その後、アメリカへ留学。2018年にバージニア大学ロースクールを卒業し、ニューヨークの法律事務所 Debevoise & Plimpton LLPに勤務。2019年、ニューヨーク州弁護士登録。帰国後の2019年9月にHolmes入社。事業戦略の策定や組織構築、ファイナンスや提携など、事業を成長させるための業務に従事している。
須貝 崇史
Holmes CEO室 兼 フィールドセールスグループ

中央大学法科大学院卒、2019年に司法試験に合格。Holmesでインターンを経験したのち、司法修習の道を選ばずにそのまま正社員として入社。 ベンチャー、スタートアップ企業のサービスを独自の視点で分析、考察するブログ「Startup Labo」を個人で運営。

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