ここ数年、新たな成長分野として注目されてきたシェアリングエコノミーが、新型コロナウイルスの感染が拡大する中で、一転して衰退してしまうのではないかとの見方が出てきている。果たして、どうなるのか。
シェアリングエコノミーの市場規模は1兆6000億円だが…
シェアリングエコノミーとは、個人や企業などが有する資産を提供したい人が、インターネットのマッチングプラットフォームを介して必要としている人に提供する経済活動のことである。資産には、自動車や部屋といった有形資産だけでなく、スキルや時間などの無形資産も含まれている。
例えば、カーシェアリングやシェアオフィス、民泊、さらには家事代行や介護、育児などが、シェアリングエコノミーを形成するシェアリングサービスとして挙げられる。
経済産業省が先頃公表した「シェアリングエコノミーに関する実態調査」の結果によると、2018年のシェアリングエコノミーの年間取引額は、1兆5225億9200万円〜1兆6007億5100万円となった。上記のシェアリングサービスを合計した数字だが、民泊において簡易宿所を含めるか含めないかで論議があるので幅のある結果となった。
ちなみに、簡易宿所を含めた民泊の同年の取引額は1459億6200万円で、前年比10倍超と急伸長した。ただ、今回の調査で前年比が明記されているのは民泊だけだった。
新たな成長分野なので実態を把握するのに手間がかかったのか、調査結果は2018年と一昨年前のものだが、それでも政府にすれば意味のある数字だ。というのは、これによってシェアリングエコノミーをGDP(国内総生産)統計へ反映できるようになるからだ。
ということで、ちょうどこの調査対象となった2018年に、この分野の有識者にさまざまな観点から取材して、本サイトで「シェアリングエコノミーの衝撃」と題した連載記事を書き、この「一言もの申す」連載でも2019年7月18 日掲載の「『衝撃』のその後 ― シェアリングエコノミーの最新状況」を記してきたので、さらにこの分野の進展ぶりを書こうと思っていた矢先だった。
それが、新型コロナウイルスの感染拡大で様相は一変した。コロナ禍によってヒトとモノの動きが大幅に制約されたことから、多くのシェアリングサービスが継続できなくなり、シェアリングエコノミーが衰退してしまうのではないかとの見方が出てきている。果たして、どうなのか。