IBMの第1四半期の業績発表は、同社の最高経営責任者(CEO)Arvind Krishna氏にとって素晴らしいデビューの場となった。同氏がIBMの戦略について示した明確な姿勢が、新型コロナウイルスや見通しの欠如に起因する需要の不確実性に対する懸念を抑えるに足るものだったためだ。
同社の第1四半期の業績は、良い部分と悪い部分が入り交じったものだった。同社によれば、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、多くの顧客は第1四半期の終盤に支出を抑制し始め、キャッシュを保全するモードに入ったという。ただし、Red Hatの業績は好調だった。
Krishna氏は、先行きが不透明な時期にも、IBMは大企業の頼りがいのあるパートナーであり続けると語った。また同氏は、IBMの事業の柱を明確にした。その内容は次のようなものだ。
IBM CEO Arvind Krishna氏
提供:IBM
信頼と透明性。業績発表カンファレンスコールにKrishna氏が出席したこと自体が、1つの変化だと言える。これまで、四半期ごとの業績発表は、最高財務責任者(CFO)のJames Kavanaugh氏が取り仕切っていた。しかし、米国時間4月6日にCEOに就任したKrishna氏は、今後は毎回業績発表の場に出席すると述べており、この計画はアナリストに歓迎されている。Krishna氏は次のように述べている。
私が最初に約束したことの1つは、透明性とオープン性だ。これはIBMの従業員や、顧客やパートナーに対してだけでなく、投資コミュニティーに対しても言えることだ。私はその精神に従い、本日だけでなく、今後の業績発表カンファレンスコールに参加することにした。
景気回復の状況が明確になる第2四半期の終わりには、新しい情報を提供できるだろう。ただし、短期的な売上高や1株あたり利益を正確に予想できるかどうかと、長期的な観点から自分たちのビジネスに自信を持っているかどうかは別の話だ。そして私は、わが社のビジネスに自信を持っている。
優れた技術を早く売る。Krishna氏は、IBMは技術力を養い、自社の技術力を証明する技術を生み出す必要があると語った。
私はIBMの社員に、技術的なアプローチで最先端を走ってほしいと思っている。わが社のチームには、ソリューションの価値をできるだけ早く世の中に示してほしい。同様に、品質にも常に気を配る必要がある。わが社の製品は、使えばその良さを理解できるようなユーザー体験、デザイン、使いやすさを備えていなければならない。私のアプローチは簡単で、IBMの価値を高めることを追求していく。これには、ハイブリッドクラウドと人工知能(AI)を中心として製品ポートフォリオの方向性を合わせ、進化する市場のニーズに対応していくことも含まれる。
私たちは投資を続け、企業買収も行っていく。すでにご存じの通り、私たちはわが社の重点領域と合致しない、一部のソフトウェアやサービスを売却した。これは今後も続けていく。IBMはこの数週間で、バーチャルセールスとリモートからのサービス提供の方向に、大きく踏み出した。それには新しい働き方が必要になる。これは、「もっとよいやり方はないか」と常に自らに問い続けるべきであることを意識させられる出来事だった。自らがやっていることを常に見直さなければ、進化していくことはできない。明確にしておきたいのは、IBMが、ハイブリッドクラウドとAIを中心とした戦略と製品ポートフォリオに自信を持っているということだ。