ITプロフェッショナルが円滑なリモートワーク環境を構築する方法 - (page 2)

河村浩明 (ソーラーウインズ・ジャパン)

2020-05-18 06:00

 新型コロナウイルス感染症の状況下においては、ITビジネスに関する5つの考慮すべき項目があります。いかなるITチームにとっても「最悪の事態を予測し準備する」ことは、状況を問わず、常に持っているべき姿勢ですが、このような事態では、特にそれが重要になります。

 深刻な問題を未然に防ぐために、ITプロフェッショナルができることを幾つかご紹介します。

スケーラブルなサービスコストの追跡:

 クラウドサービスのように、需要に応じて自動スケーリングが可能な「as a Service」機能には、注意が必要です。これらのサービスのトラフィック量およびデータの相互作用の増加に伴う指数関数的なコストを、再確認して理解することが重要です。そうすることで、事前に利用料金の増加を防ぐことができます。

デジタルツールのライセンスを確認する:

 オンラインでのコラボレーションが可能なツールを含む、多くのデジタルツールは、ライセンスごとにユーザー数が制限されています。ワークフローの混乱やチームからの問い合わせを防止するために、特に従業員が自分で導入したツールに関して、ITプロフェッショナルは、事前にライセンスの制限を確認する必要があります。

遅延の問題に備える:

 ビデオ会議サービスをコントロールすることはできないかもしれませんが、それらのサービスのパフォーマンスに関するメールや問い合わせがITプロフェッショナルに殺到することは予想できます。これを管理するためには、ウェブサイトやソーシャルアカウントを通じてこれらのサービスの状況を常に把握し、困っているチームへ最新情報を常に共有することが必要です。ITプロフェッショナルは、ネットワーク監視ツールを活用することで、リモートワークによるコラボレーションシステムの負荷の増加に伴う問題を迅速にトラブルシューティングすることができます。例えば、私たちは「SolarWinds Network Performance Monitor」や「SolarWinds NetFlow Traffic Analyzer」を提供しています。

可能な限り自動化する:

 リモートワークにより、複数の場所にある多くのデバイスを管理しなければならないプレッシャーが増加し、ITプロフェッショナルが運用監視のような重要なタスクに費やせる時間が限られてしまいます。これを補うために、最小限の介入で、ITプロフェッショナルが脅威を特定し、問題を認識して、ITチームに通知するためには、ある程度の自動化の機能を備えたネットワークソリューションを採用する必要があります。セルフサービス機能を導入することで、リモートのユーザーが必要な情報に瞬時にアクセスできるようになり、ITサポートデスクの専門家はより複雑なタスクに集中することができるようになります。

適切なツールに切り替える:

 ITプロフェッショナルにとって最も労力がかかることは、社内のデジタルインフラストラクチャーを管理するために設計されたネットワークツールです。この難関を突破するには、創造力が求められます。トラブルシューティングのためにリモート管理ツールを採用する、外部デバイスを可視化できるネットワークパフォーマンス監視ツールを導入する、あるいは新たな脅威ベクトルに対抗するため、セキュリティとVPNの監視対策を実施するといったことが考えられるでしょう。

冷静さを保ち、継続する

 リモートワークを円滑で快適にするためにITプロフェッショナルができることは、テクニカルサポート以外にもあります。まず周辺機器の接続方法についての詳細な手順や、ビデオ会議中に避けるべきこと(帯域幅の大きいストリーミングやダウンロードなど)を含めたガイドラインを公開することもその一つです。また、Slackなどのチャットサービスで従業員のために社内のチャットルームを設定することで価値を提供し、不安を軽減させることもできるでしょう。

 最も重要なのは、ITプロフェッショナルが時事問題の突発性と深刻性を考慮した中で、自分たちが最善を尽くしていることを忘れないことです。現状抱えている事態から立ち直り、さらにスキルアップするための時間を確保する必要があります。そうすることで、今後問題が発生したときに備えて、問題に取り組むための明確さと適切な心構えを習得することができます。誰もがそうであるように、ITプロフェッショナルは仕事における新たな壁と、それに伴う課題に向き合うための時間が必要です。入念に、かつ、賢明に向き合うことで、成功を導くことができます。

 次回は、リモート環境でアプリケーションやITインフラの稼働を維持する必要性について解説します。

執筆:河村 浩明(かわむら ひろあき)
ソーラーウインズ・ジャパン 日本担当カントリーマネジャー
東京大学工学部物理学科卒業。IT業界での長年にわたるキャリアの中で、営業やビジネス開発などで管理職を歴任。日製産業(現・日立ハイテク)、EMCジャパン、日本オラクルを経て、サン・マイクロシステムズ、シマンテック、DropBox Japanでは代表取締役社長を務める。2019年5月から現職。

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