KDDIは、NEC、ノキアソリューションズ&ネットワークス、富士通と協力し、5G(第5世代移動通信システム)の高度化に向けて、基地局仮想化とO-RAN Alliance(Open Radio Access Network Alliance)準拠のマルチベンダー接続性に関する実証実験を実施している。O-RAN Allianceとは、5Gをはじめとする次世代の無線アクセスネットワークの改善を目的としている業界団体。実証実験の実施期間は、3~9月まで。
実証実験のイメージ(出典:KDDI)
基地局設備は従来、専用のハードウェアとソフトウェアが一体となっているため、あらかじめ周波数などのリソースの割合や設置場所を決めて運用していた。そのため例えば、あるエリアにおいてモバイルブロードバンド回線に多くのリソースを割り当てている中で低遅延サービスを展開したい場合、低遅延用のトラフィック処理が十分に行えないといった状況が生じていたという。
こうした課題に対しては、低遅延サービスを利用したいユーザー向けにネットワークを分割し、リソースを配分する技術(ネットワークスライシング)を導入することなどにより、ユーザーの利用用途に合わせたサービスが提供可能になるとしている。
このネットワークスライシングの導入を柔軟に行うには、基地局を汎用ハードウェアで構築し、同ハードウェア上でさまざまなソフトウェアを動作させる仮想化技術への適用が必要となる。今回の実証実験では、基地局の仮想化に必要な要素技術の検証を行う。
基地局仮想化の実用性の検証では、5G基地局を構成する装置のうち、データ処理部のCU(Central Unit)と無線信号処理部のDU(Distributed Unit)に仮想化技術を適用し、仮想化された基地局の実用性を検証する。
基地局仮想化の検証イメージ(出典:KDDI)
O-RAN準拠のマルチベンダー接続性の検証では、O-RAN Allianceで規定されるオープンなインターフェースを活用し、DUと無線装置であるRU(Radio Unit)間の基地局のフロントホールにおいて、さまざまなベンダーの機器同士の相互接続の検証する。これまで基地局を構成する装置同士を接続するための仕様はベンダーごとに異なり、複数ベンダーの装置を組み合わせて基地局を構成した場合、動作しないなどの問題が生じるため、一般的には同じベンダーの基地局装置同士が接続されていた。
マルチベンダー接続性の検証イメージ(出典:KDDI)
KDDIは今回の実証実験で培った技術を基に、5G専用に開発したスタンドアロン構成のコアネットワーク設備を基地局に設置し、ネットワークの柔軟性をさらに高めていく。これにより、通信ネットワーク全体でのネットワークスライシングへの対応を進めていくという。こうしたインフラを整備していくことで、4K/8Kといった高精細映像の高速データ伝送や産業機械の遠隔操作、交通分野における自動運転など、さまざまな分野で「超高速」「多数同時接続」「低遅延」といった5Gの特徴を最大限に生かしたネットワークの提供が可能になるとしている。