実戦で見えてきた短期的な課題と対応--会議の断捨離も一手

岡崎隆之 (Dropbox Japan)

2020-06-05 07:15

 5月25日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による緊急事態宣言が全国で解除されましたが、影響はまだまだ大きく、リモートワークや交代制での勤務を当面継続するという組織も少なくありません。

 今回、多くの組織が準備時間のないまま運用の切り替えを余儀なくされたこと、また事態の長期化によってさまざまな課題が浮かび上がっています。一方前向きに捉えると、全世界的に働き方の変革を余儀なくされ、チームメンバーだけでなく取引先や業界団体でも実践し、問題を解決していこうという強い動機付けとなりました。

 このまま新型コロナウイルスの脅威収束が望まれますが、「Dropbox Business」ユーザーでも組織としての事業継続計画(BCP)などの観点から、第2波、第3波のための準備を開始されています。今回は目の前に迫っている短期的な課題を中心に紹介し、最終回となる次回は中長期的課題について紹介します。

運用の課題と対応

 運用の課題はITインフラ、組織や業務フロー、人事制度や労務管理、モチベーションや精神面など多岐に渡ります。時間や予算の制約からそれら全ての同時解決は簡単ではありません。必然的に何らかの仮説をもとに、優先順位をつけて対応していくことになります。

 短期的な課題として、よく耳にするのは次のような課題です。

  • 「仮想私設網(Virtual Private Network:VPN)や社内サーバーの帯域資源が圧迫され、作業が途切れてしまう。
  • 「ウェブ会議によって移動時間が短縮された反面、会議が以前よりも増加した。
  • 育児や介護など家庭内の事情による中断があり、仕事に集中できない。
  •  VPNや社内サーバーの負荷急増は多くのIT部門にとって悩みの種です。業務で利用するファイル、データも年々大容量化しており、出張者などの一時的な利用を前提とした容量で設計したインフラは突然のトラフィック増加に耐えきれませんでした。また、パブリッククラウドを利用しているケースでも、扱えるファイル数や1ファイルあたりの容量に上限があり、社内サーバーから運用を移行できないという落とし穴に陥る組織も少なくありません。

    帯域容量やストレージ容量の制限

     回線装置、サーバーの増強、または大容量に耐えうるクラウドサービスへの移行などの対策が考えられますが、予算、納期、セキュリティポリシーとの整合性検証など短期的な対処は難しく、中長期的な対策と位置付けざるをえません。短期的には業務に必要最低限のファイル、データに限定するなど運用上の工夫で乗り切ることとなります。全ての業務で適用できる手法ではありませんが、ファイルやデータの整理整頓を進めることで、ある程度回線やストレージ容量への負担を軽減できます。Dropboxのサービス利用動向からも、古いファイルほどほとんどアクセスされず、最近作成されたファイルほど頻繁に参照されたり更新されたりすることがわかっています。

     プロジェクト全体、組織全体のファイルの整理整頓も中長期的な対策とならざるをえません。直近1〜2週間で必要な業務の分のみとするなど、ある程度短い期間、範囲に限定し、最低限の作業ファイル一式としてまとめると良いでしょう。これを週1回または2週間に1回などの定期的な習慣として継続することによって、再び在宅勤務への切り替えが発生した場合でも混乱を最小限に抑えることができます。

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