再定義されるオフィス--在宅勤務を経験してみえてきた“働く場所”のこれから - (page 2)

尾羽沢功 (シトリックス・システムズ・ジャパン)

2020-06-23 06:30

オフィスの在り方の再定義

 しかし、デジタル化の加速というメリットがある一方で、対面のコミュニケーションで得られる活気や信頼関係のために、オフィスの在り方や機能の再考が求められています。

 ホワイトボードを前に皆がアイデアを書き込んで意見を交換し、雑談から生まれる新しいアイデアなど、人と人が交わる環境は、イノベーションの創出において非常に重要であるといわれています。特にテクノロジー企業にみられるように、場に応じて人間に最適な環境を会社が作り出し、偶発的な出会いや創造を作り出すという「Activity Based Working(ABW)」という考えのもと、オフィスの機能を拡張させ、また優秀な人材を引き付けるための戦略としてオフィスを位置付けてきました。

 コロナ禍の前と後では、テレワークの位置付けは大きく変わりました。コロナ禍以前は、オフィス勤務が大半を占める中、テレワークへのシフトを試みていましたが、緊急事態を期にテレワークは、やるかやらないかの二者択一ではなくなりました。そして今、多くの企業がテレワークと職場の正しいバランスを模索しているのではないでしょうか?

 職場は対面で意見を交換する場となり、それを実行に移す際に集中できる時間としてのテレワークなどすみ分けが進むのではないかと思っています。必要とされる仕事の内容に応じて、働く場所をかえることで、これまで以上に生産性とクリエイティビティの両立が可能になるかもしれません。

分散する職場に必要な新しいリーダーシップ

 また、6月10日に発表されたパーソルの調査によれば、オフィスに出社する従業員と在宅勤務を継続する従業員が混在する職場は、従業員の不安につながりやすいという調査も出ています。テレワーク中は同僚の様子や自分の評価が分かりにくいという側面もあります。

 日常的に6m以内の距離で接している人に対して安心感を持つといわれ、職場での心理的安全条件のひとつは物理的な距離です。このような心理的安全の環境を作り、社員同士が有機的に集まるプラットフォームを作ることもリーダーの役割であると思います。

 緊急事態など全従業員が在宅勤務の際は、物理的に距離が離れるため、チャットでの「雑談」の場所づくりや、仕事以外での従業員のつながりを通して従業員エンゲージメントの向上に努める企業が多く見受けられました。シトリックスでも、従業員がヨガやボクササイズクラスをオンラインで行い、オンラインラジオ体操の時間を設け、距離を縮めるために集うということを戦略的に実施してきました。

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