KDDI、KDDI総合研究所、国際電気通信基礎技術研究所(ATR)、XNefは、脳神経科学と人工知能(AI)を組み合わせ、スマートフォンの使い過ぎといった「スマホ依存」に関する共同研究を開始した。
今後4社は、スマホ依存の実態調査・解明を進め、スマホ依存の改善・予防を行うスマートフォンアプリケーションを2024年度中に実用化することを目指す。
2019年12月にKDDIとKDDI総合研究所が約9万人を対象に実施したアンケート調査では、全体の約4人に1人(約25%)がスマートフォンの長時間利用などに問題を感じており、その中の約83%が、スマートフォンの利用を改善したいと回答している。また同調査では、全体の約74%が睡眠時間の減少、視力の低下、生活習慣の乱れなどの悪影響があると答えている。
さらに、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出自粛の影響により、スマートフォンやインターネットの利用が促進され、ニューノーマル(新常態)においては、スマートフォンが社会を支える基盤としてより一層重要な存在となっていくと考えられている。そうした状況を踏まえ、KDDIとKDDI総合研究所は、これまでの啓発活動に加え、科学的な観点でのスマホ依存に関する研究を進めることが必要だという結論に至った。
共同研究のイメージ(出典:KDDI、KDDI総合研究所、ATR、XNef)
同研究では、脳・行動情報に基づくスマホ依存の推定と、脳活動を活用したスマホ依存の軽減の研究が行われている。
スマホ依存の推定では、脳情報やスマートフォンの行動情報をAIで解析し、スマホ依存の状態を検知する手法の開発を目指すとともに、精神疾患との関連性なども調査し、スマートフォンの利用状況から精神疾患を類推する手法などの開発を目指す。
スマホ依存の軽減では、ATRが実施した研究で開発されたDecNef法を活用し、スマホ依存を引き起こす脳活動を可視化し、その程度を軽減する手法を研究していく。DecNef法とは、fMRI(MRIがもたらす構造情報の上に、脳の機能活動がどの部位で起きたかを画像化するもの)とAIを組み合わせ、対象とする脳領域に特定の活動パターンを誘導する手法のこと。
各社の役割は、KDDIが快適なスマートフォン利用環境の実現に向けた研究開発を行う。KDDI総合研究所はスマホ依存の実態を解明するとともに、それを軽減するための行動変容技術の研究開発を行う。ATRはスマートフォンの利用に関する脳活動・行動の解析とDecNef法の応用を担当し、XNefはDecNefシステムの研究開発、臨床開発戦略の提案を行う。