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IT部門は顧客体験を重視せよ--アドビのCIO

國谷武史 (編集部)

2020-07-28 06:00

 かつてパッケージ販売をメインにしていたAdobe。現在ではクリエイティブやマーケティングの機能をオンラインで提供するSaaS企業に変身し、デジタルトランスフォーメーション(DX)をいち早く成し遂げたケースとして、しばしメディアに取り上げられることもある。マーケティング領域では「顧客体験(CX)」が重視されているが、同社はそのノウハウも社内のIT環境に生かしているという。上級副社長兼最高情報責任者(CIO)のCynthia Stoddard氏が、日本メディアのグループ取材に応じた。

Adobe 上級副社長兼最高情報責任者のCynthia Stoddard氏
Adobe 上級副社長兼最高情報責任者のCynthia Stoddard氏

 Stoddard氏は4年ほど前からCIOを務め、同社のクラウドサービスを支える「Information Technology and Reliability Engineering」チームを率いているという。

 Stoddard氏は、ここ数年におけるCIOの役割について、「大きく変わりつつある。従来のバックオフィスから戦略的になり、ビジネスやプロセス、データのつながりをエンドツーエンドで捉え、データ駆動型の意思決定を支える。そして、卓越したオペレーションを通じて信頼性や拡張性、回復性といったITを提供すると同時に、クラウドやRPA(ロボティックプロセスオートメーション)といったツール、さらに標準化を通じて属人性を排除し、社員が適切なツールによって生産性の高い仕事をできるようにする。組織間の壁を取り払い、あるいは新しい技術にも挑戦して、それらをイネーブルにしていく。こうしたことを主導し、システムの構成変更ができ、高いコミュニケーション能力も有する」と語る。

 Stoddard氏が挙げる能力は多岐にわたるが、その基本にはデータがあり、同社は「Data Driven Operating Model(DDOM:データ駆動型運用モデル)」を提唱している。ユーザーにとって理想的な「体験」を設計し、ユーザーと接するあらゆる機会(タッチポイント)を通じて提供し、そこで得たデータからギャップを測定、把握し、最適化を実行していく。タッチポイントからデータを集め、統合、分析、予測、活用することでユーザー体験を向上させていく――CIOは顧客中心の視点を持って体験を高めていくと、Stoddard氏は以前にブログでもそう綴っている。

 現在のコロナ禍においてStoddard氏は、その以前から事業継続に役立つテクノロジーという視点を伴いつつ、社員の生産性を「体験」の観点から高めていくITツールやサービスを整えてきたとする。

 「数年前より組織を広く見渡して生産性につながるコミュニケーションツールに集約した。会議やファイル共有といった粒度で全て整理、集約し、役職や職種ごとにペルソナを立て、ペルソナをベースに生産性を高める環境を構築している。Slackを使ったりMicrosoft Teamsを使ったりしているが、全社のビデオコラボレーションはBlue Jeansに統合した」

 新型コロナウイルスの拡大に伴って大半の社員が在宅勤務を余儀なくされている。コロナ禍前に比べコラボレーションツールの利用率は20%ほど向上した。開発ツールの利用率は当初こそやや低下したが、現在はほぼ変わらないという。こうした把握ができるのは、「体験」の実情をデータから把握できるためで、ここでの状況は在宅勤務下でも社員の生産性が落ちていないことを示す。

 「もちろん大容量ファイルをスムーズに送受信できない、あるいは自宅からの接続が安定していないといったネットワークなどの問題も把握している。そこではビデオ会議で映像を使わないように工夫することもある。いずれにしても音による電話会議から映像のオンライン会議というように体験そのものが大きく変化している」

 Stoddard氏は、同社における働き方のDXがコロナ禍の前にほぼ実現されていたと述べる。

 「仮想デスクトップサービス環境も、SaaSも、ゼロトラストネットワークも、コミュニケーションツールも、オンラインホワイトボードも導入している。例えば、コロナ禍の現在も当社で多くのインターンが働いているが、自宅から仮想デスクトップサービスにアクセスし、セキュリティチェックをしてビジネスアプリケーションを利用している。必要ならアクセスするための機器も提供している」

 また、昨今のDXではIT部門に限らずビジネス側の人材も積極的にテクノロジーを使う場面も広がる。Stoddard氏は、IT部門がビジネス側のテクノロジー活用を阻害してはならないとして、「エントラストモデル」をキーワードに挙げる。「ビジネスプロセスより信頼できる適切なデータやツールといったものをビジネス側と密に連携しながら導入していく。ビジネスをより良くするために互いに信頼することが大事だ」という。

 コロナ禍で企業のDXの取り組みはとどまるというより加速するとの見方は多い。顧客企業の経営層ともDXについての会話が多いといい、「オフラインからどうオンラインにするのかといった話もあるが、顧客がどうしたいのかを知りたいといった、データを起点に取り組みを始めることに興味があるようだ」(Stoddard氏)

 デジタル化には、まずどこから手を付け、ビジネスプロセスがどう実行されているかを理解することが肝心とのこと。その上で事業継続性を確保し、システムのみならずビジネスそのものが安定的であるようサポートも提供する。「きちんと(外部の顧客にも社員にも)体験を提供できるかを見ている。DXはとても重要でAdobe自身が変化をなし得たことで顧客にデジタルジャーニーを提供できるようになり、社員にもそれを提供している」

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