NTTコミュニケーションズ(NTT Com)は9月4日、8月31日にサービスを開始した「NeWork(ニュワーク)」に関するメディア向けの説明会を開催した。
まず、取締役 アプリケーションサービス部長の工藤潤一氏は、同社の創立20周年を機に、新たに制定されたというミッション(企業理念)「人と世界の可能性をひらくコミュニケーションを創造する」を紹介、コロナ禍の現在は「新しいコミュニケーションを提供しなくてはならないという使命を感じNeWorkを開発した」と語った。
同氏が率いるアプリケーションサービス部では、さまざまな社会課題を解決するために、業界横断型の「Smart World」、業界横断型の「DX」を指向しているという。「具体的にはユーザーの持つさまざまなデータを収集、活用、分析してさまざまな価値を創造する。そういった仕組みを提供することで、お客さまに新しい価値(Digital Experience)を提供する。ユーザー企業を中心としたさまざまなステークホルダー間、従業員や顧客、企業間といったさまざまな“結節点”でのデジタル化を促進することで、社会課題を解決していく」(工藤氏)とした。
アプリケーションサービス部が掲げる「Smart World実現に向けた取り組み」の概要。特定の業界に特化した形ではない“業界横断型”のDXの実現や、コロナ禍を受けた新たなコンセプトである「ノーコンタクト」の実現に取り組むという
こうした取り組みは、コロナ禍以前から取り組んでいたというが、コロナ禍で社会状況が大きく変化する中、「『コロナ禍を奇貨としたDXの加速』として、私どもも大きな使命を果たすべき時代が来たのかなと感じている。『密集、密閉、密接』という、いわゆる“三密”だが、この三密を回避する“New Normal”の新しいビジネスシーンに対して、基本概念は『ノーコンタクト』であり、これを実現するサービスを提供していきたい」(工藤氏)と語った。
ユーザー企業を中心に、業界/業種といった他の企業、顧客、そして企業内部での会社と社員、社員間、といったさまざまなコミュニケーションの場面を想定し、それぞれにデジタル化されたコミュニケーションのソリューションを展開している。今回発表のNeWorkは社員間のコミュニケーションを支援するもので、かつ日常的な打ち合わせ/会議といった比較的小規模なコミュニケーションをそうしたサービスと位置付けられる
NeWorkのプロダクトマーケティングマネージャーで、アプリケーションサービス部 担当課長の大野智史氏は、サービス概要を説明。「ニューノーマル時代の働き方」として、従来のようにオフィスに『集合』して働くのは難しくなり、在宅勤務/リモートワークなどの『分散』に移行するーーとした上で、そうした新しい働き方の課題として「コミュニケーションの絶対量が不足」「会議時間以外の余白の消失」「新しい気づきや雑談の減少」という3点を指摘した。
そして、既存のウェブ会議システムだけでは充足できないニーズがある、とのことからNeWorkを開発したという。同氏は、NeWorkのコンセプトとして「従来のウェブ会議では難しかった立ち話感覚でのちょっとした相談や雑談などを活性化できるようにデザインされた、全く新しいコミュニケーションツール」「同じオフィスにいるかのように、チームやプロジェクトのメンバーに話しかけることができる」の2点を挙げている。また、「気軽に話しかけられる仕組み」として、「JUMP IN機能」「MY MODE機能」「LOOK IN機能」の3点が実装されているとした。
最後に、サービス開発の舞台裏として、イノベーションセンター デザイン部門「KOEL(コエル)」の武田透摩氏が紹介した。開発の特徴的な点として同氏は、「全てリモートワークで開発した」「デザイン思考のアプローチを採り入れて、継続的に改善を行っていくことを前提にサービス開発を進めてきた」という2点を挙げた。
NeWorkに組み込まれた「気軽に話しかけられる仕組み」。基本的なアイデアは、一般的なWeb会議システムのように「参加者のみが入ってくる」場ではなく、チームメンバーなどが集まっているバーチャルなコミュニティーをまず作っておき、その中で相手の状況等を確認しつつ自由に話しかけることができる機能を用意する、という形になっている
これらの点については工藤氏からも「従来のNTTコミュニケーションズはインフラサービスを担うということで、非常に堅いプロセスで、しっかりと開発を行い、完全にでき上がってからでないと世の中に提供してこなかった。だが、そのプロセスをガラリと変えて、スピーディーに、まずとにかく出してみて、お客さまや世の中の反応を見てアジャイルに改善していくことにした。また、使うユーザーが『どういうところにお困りなのか』、そこをしっかりデザイン思考で分析することで開発を進めた」と述べた。
もしかしたら、NeWorkというサービスそのものよりも、同社が新しい開発プロセスを採り入れ、しっかりと成果を出したーーという点こそが今後につながる最大のポイントと言えるのかもしれない。