新政権が目玉政策に掲げる「行政のDX(デジタルトランスフォーメーション)」に向けた取り組みが、平井卓也デジタル改革担当大臣のもとで早速、動き出した。発信力のある平井氏には、ぜひともIT用語は丁寧な説明を求めたい。
「カタカナが多くて意味が分からない」という声への懸念
前回の本連載(9月17日掲載)で「新政権は行政のDXを強力に押し進めよ」と題して、菅義偉新首相がデジタル化を目玉政策に掲げ、デジタル改革担当大臣に平井氏を起用したのを機に、省庁横断組織を設けて、強力なタスクフォースと合わせてDXを推進すべきだと訴えた。
「これまでにないスピード感をもって臨みたい」と大臣就任会見で述べた平井氏は、菅氏が掲げた「デジタル庁の新設」に向け、4連休初日の19日に早速、関係省庁の実務者を集めてキックオフミーティングを開き、9月内にも「デジタル庁設置準備室」を立ち上げることを打ち出した(写真1)。

デジタル改革担当相の平井卓也氏が9月19日に開いたキックオフミーティングの様子(ミーティングを放映したYouTubeより)
また、中央省庁や地方自治体の情報システムの共通化や、マイナンバーの活用による行政の効率化をどのように実施していくか、などについても検討に入ったという。
このようにスピード感をもって動き出した平井氏が強く意識していると見受けられるのは、メディアを通じた発信だ。IT担当大臣を歴任した「自民党きってのIT通」と目され、ご本人もNHKの取材で「デジタルネイティブの人たちに負けないくらいの知識が必要だと思ってやっている」と言うほどの得意分野なので、今回就任したデジタル改革相は、まさに打ってつけの役どころだ。その自信と政治家としての説明責任に対する強い思いが、メディアへの対応にも表れているという印象だ。
そうした平井氏のメディアへの発信力に対する興味もあって、筆者は就任後の会見をはじめとして、さまざまなメディアを通じて同氏がどのように表現するか、注目している。これまで目にした大半の映像や記事は、同氏が表現として難しくならないように気を配っている様子がうかがえたが、中には少々残念な対応もあった。
例えば、先に述べたキックオフミーティングでの記者たちとのやりとり。ぶら下がりのような取材だったこともあってか、平井氏が口にした言葉の多くがカタカナのIT用語だった。今後の活動の方向性についても「コネクテッドワンストップ」「ワンスオンリー」「デジタルファースト」といった言葉が並んだ。
このやりとりが、テレビの情報番組で取り上げられ、コメンテーターが「カタカナが多くて意味が分からない」と話したことから、「平井氏の話は難しい」と感じた視聴者も少なくなかっただろう。動画でそのやりとりを見た筆者の印象は、平井氏がぶら下がり取材で気を緩めたか、もしくはデジタルの最前線の雰囲気をわざと出して見せたか、どちらかだと感じた。
いずれにしても、平井氏にはどんな状況であろうとメディアに発信する際は、IT用語は丁寧に説明してもらいたいと強く要望したい。