アトラシアンは10月22日、日本を含む海外主要5カ国で実施したリモートワークに関する調査「Reworking Work: Understanding The Rise of Work Anywhere」の結果を発表した。諸外国と比べると日本は、リーダーシップへの満足度やワークライフバランスの満足度が著しく低く、チームコラボレーションも機能していないという。
代表取締役社長 Stuart Harrington氏は「もともとリモートワークの経験値が低かったのにコロナ禍でリモートワークを強いられ、振り幅が大きかった。さらに(日本企業で)ペーパーレスも進んでおらず、稟議書やハンコが残っている。ファクスを使っているのも日本だけ」と分析する。
アトラシアン 代表取締役社長 Stuart Harrington氏
Atlassianは4~6月に日本、米国、ドイツ、フランス、オーストラリアを対象に、リモートワーク以前の状況やリモートワーク体験、将来への期待を1時間かけて聞き取る「リモート・インタビュー」と、家事と並行してリモートワークに従事する際の体験を聞き取る「ダイアリー・スタディー」、5000人を対象にした定量調査を組み合わせた。
「勤務時間に柔軟性がある」と回答した割合はグローバルで47%だが、ドイツは63%。「リモートワークに問題はなかった」と回答した割合はグローバルで53%だが、フランスは36%。「オフィスに戻ることに不安を感じる」と回答した割合はグローバルで53%だが、米国は67%。「感染拡大という制約の中、自宅で効率的に仕事をするのは難しい」と回答した割合はグローバルで27%だが、日本は44%。
その日本でダイアリー・スタディーに回答した方は、「在宅勤務制度が十分に確立されず、タブレットだけ支給されたが、読み込みが遅く、その間にコーヒー休憩ができてしまうほど」と不満を吐露している。
Atlassian ワークフューチャリスト Dominic Price氏
豪本社ワークフューチャリストDominic Price氏は、在宅勤務体験に影響を与える3要素として「たとえば子供やパートナー、親の介護など(家庭の)構成要素を指す『世帯の複雑さ』。(他の同僚と)チームワークで取り組むのか、1人で取り組む業務なのかを指す『役割の複雑さ』。組織内の同僚や外部の人とのコミュニケーションを指す『ネットワークの質』。この3要素を組み合わせただけでも従業員が異なる状態にあり、従業員満足度を高めるため要素が明確になる」とコロナ禍における新たな働き方を実現するための土台を指し示した。
調査では、リモートワーク下にある企業のリーダーシップ満足度やワークライフバランスの満足度、従業員同士のコラボレーション成功度も調べた。日本と全体を比較すると、リーダーシップ満足度は18%(全体は41%)、ワークライフバランス満足度は31%(全体は44%)、コラボレーション成功率もわずか17%(全体は40%)。
日本のリモートワーク未経験率は51%、「感染拡大という制約の中、自宅で効率的に仕事をするのは難しい」と回答した割合は44%(全体は27%)。さらに企業のリモートワーク移行に関する対応は48%が不満を持ち、全体平均の29%と比較しても、多くの日本人が自社に対する不信感を募らせていることが分かる。また、自宅がリモートワーク環境にふさわしくないと回答した割合は45%(全体は34%)だった。
この結果について、Harrington氏は「日本はロックダウンしなかったが、外出自粛は実質的なロックダウンだった。従業員は経験のないリモートワークを強いられ、満足度低下につながっている」と分析した。