日本マイクロソフトは11月11~13日、リモートワークや働き方改革に関心を持つ企業向けに「お客様の取り組みに学ぶ、ニューノーマル時代リモートワーク最前線」と題したオンラインセミナーを開催。鹿島建設 横浜支店 建築部 建築工事管理グループ 鹿田康晴氏が登壇して「協力会社とともに進める働き方のニューノーマル-Microsoftソリューションを活用した建設業におけるDXとシチズンデベロッパーの実践-」と題して講演した。
各工程の進捗状況を可視化して情報をフラット化
協力企業が介在する現場は多い。ITの世界でいえば客先に常駐するSEもいれば、下請け、孫請けでコードを書くプログラマーもいる。建築の世界も例外ではなく、元請けが計画した流れに沿って各協力企業が汗水流して工事を行う。
だが、協力企業側にも課題は存在する。それは人材不足と技能伝承だ。
鹿島建設 横浜支店 建築部 建築工事管理グループ 鹿田康晴氏
鹿田氏は「人手不足の要因は多様ながらも、建築業に対するイメージから建設業界の希望者減少が考えられる。また、“一子相伝”の慣習が根強く残っており、離職者の増大が次の世代への技能伝承を妨げている」と推察する。
さらに工事の現場は、各協力企業によるピラミッド型の組織構造が工事状況の把握を妨げ、“待ち時間”が発生することが多い。そのため本来1つの工程に対して1人が連続すれば済む作業を、複数の技能者を投入し、人材不足に拍車をかけると同時に賃金の下落を招いてしまう。
これらの現場が抱える課題に対して、鹿田氏は「各工程の進捗状況を可視化することで、各社が持つ情報をフラット化する仕組み」にたどり着いた。
具体的には協力企業の技能者が持つスマートフォンで工事完了を報告し、入力データを処理した後にメール配信することで状況把握に努めるという仕組みである。また、技能伝承という課題に対しても、協力企業側に利点があるアプリケーションを提供することで、暗黙知となっていた知見をデータとして蓄積し、機械学習にかけることで未熟な技能者を補助する仕組みも考案した。
これらを具現化したのが、Power AppsやPower Automate、Power BIを組み合わせた「Microsoft Power Platform」である。
前工程が終わらないと次の工程に移れず、工事対象が大規模マンションの場合は大きな遅延を起こしかねない、内装工事が抱える課題を解決するためのアプリケーションとして「内装工事進捗管理システム」を開発した。従来は協力企業が「部屋名×工程名」で紙の表に手書きで色塗りしていたため、事務所に立ち寄らなければならず、リアルタイム性の欠如や人的ミスが発生しがちだったという。
そこで鹿島建設は完了した工程と部屋番号をMicrosoft Formsに入力すると、Power Automateで処理したデータをもとにSharePointの管理表が自動的に塗りつぶすシステムを用意した。
当然ながら管理表は事務所のPCやスマートフォンから確認できるため、待ち時間の抑制につながり、1人あたりの作業量は16%、クロス工事は1人あたりの作業量26%の向上に至っている。内装工事進捗管理システムは大型マンション1件、大型ホテル2件での利用実績があり、今後も複合施設工事2件や大学の新築工事1件に用いるという。
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