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業務改革は目的とテクノロジーの位置付けが大切--ジェンパクト田中社長

國谷武史 (編集部)

2020-11-27 06:00

 新型コロナウイルス感染症の流行を受けて企業では、抜本的な構造改革に乗り出す動きが広がっているという。ビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)サービス大手Genpactの日本法人で代表取締役社長を務める田中淳一氏は、「請求書の処理といった個別業務の改善から全社規模で業務を改革したいとする顧客が増えている」と話す。

ジェンパクト 代表取締役社長の田中淳一氏
ジェンパクト 代表取締役社長の田中淳一氏

 GEのシェアードサービス部門を母体とする同社は、財務・会計や調達などに加え、近年は営業やマーケティング、需給管理などにもアウトソーシングサービスの提供領域を拡大する(関連記事)。2019年には業務改革支援のコンサルティングサービスを開始し、2020年7月には海外でITアウトソーシングにも進出した。田中氏は、BPOの“実行部隊”とコンサルティングの一体的なサービス提供体制に強みがあるとし、2020年12月期で国内は前年同期比約28%増の成長を見込んでいるという。

 コロナ禍の前から人工知能(AI)やロボティックプロセスオートメーション(RPA)などのテクノロジーを活用して業務効率化の取り組む企業の動きはあった。例えば、伝票処理の作業をRPAに置き換え、人手に比べて作業時間を8~9割削減したというような実績も多方面で見られた。

 ただし見方を変えると、こうした効果は業務全体の一部でしかなく、本質的には業務全体を効率化することが重要だとされる。それでも実際には、長年に渡って形成され属人化もしている複雑な業務や作業の仕方を変えるのは難しい。個々の作業やフローがどのように行われ、各作業をつなぎ合わせた業務全体の流れを把握するだけでも多くの労力と時間を要する。業務全体を変えるには、それを支える現場の協力が不可欠であり、テクノロジーの活用は変革全体の一部でしかない。

 田中氏は、「仮に全体最適でコストを50%削減しようとすれば、実際にRPAで削減できるのはそのうち10~15%程度。RPAが登場し始めた5年ほど前は30%くらいできるだろうと期待していたが、これが実情だと思う。業務全体で本当に自動化や標準化が進めば、RPAの効果がようやく30%程度になるだろう」と話す。

 好況時の業務改革は、自社の競争力をさらに高めて一層の成長を図る取り組みになることが多く、意欲も前向きだ。しかし、先行きが見通せない状況下では、支出を抑制して生き残りを図らなければならない。特に業務を支える現場では、改革で自身の仕事や雇用が失われるのではないかと不安が生じ、意欲も後ろ向きになりがちだ。

 業務改革の取り組みを進める上で田中氏は、チェンジマネジメントの重要性を挙げる。時間を費やしてでも経営層と現場のコミュニケーションを深めて目的に取り組む意識を合わせる。チェンジマネジメントを確実に実行することが不可欠であり、「業務改革は人間が行うもの。携わる人々に興味をもってもらわないといけない。彼らの関心事が何であり、その解決や実現のための方法を提示し、実行する。地道で泥臭いが、やり切ること」という。

 業務改革でのテクノロジー活用は、そこに携わる人々の目的を実現する手段と位置付ける。「例えば、経理部門にはビジネスにまつわるデータが集まる。データを分析し、経理の専門性を生かしてビジネスをより良くするためのアドバイスを行う役割を果たしたいと考えている。今までは処理作業が忙しくできなかったが、やりたいことを妨げる課題をテクノロジーで解決し、やりたいことができるようにリソースをシフトさせる」

 同社は、そうした観点からテクノロジーを利用する。ビジネスインテリジェンス(BI)ツールやAIなどを利用して業務の流れを分析し、全体像を把握した上で、RPAなどのツールを適用できる作業から自動化などを進める。最終的に業務プロセスの始まりから終わりまでの全体を標準化していくアプローチをとる。ツール自体もさまざまな業務に適用した結果のデータをAIで分析し、改善して汎用性を高める。ツールで顧客を支援し、その実績がツールを進化させ、その恩恵が顧客に還元される流れを構築している。

 業務改革によって人材に余裕が生じれば、本業のスキルの幅を広げる目的でAIやRPAなどのテクノロジーのスキルを習得する場を提供する。あるいは同社のサービス提供に参加してもらいつつ、新たな活躍の場を提供する取り組みも行う。コロナ禍の厳しい局面でも機会を生み出す工夫があるという。

 これらを踏まえ田中氏は、2021年も近年の取り組みを推進しながら同社としてのビジネスを20%近く成長させたいと語る。

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