銀行共通API開発研究会は現時点で26団体が参加しているが、「今後参加する企業にも仕様書は開示される」(井上氏)。銀行共通APIはあくまでも民間団体による提案にとどまり、法的拘束力などは存在しない。
この点について質問がおよぶと、井上氏は「(現時点では)様子見という意見をいただいている。ただ、日本は叩き台がないと前に進まない。約20年前にあった某協議会は会計システムの統合を試みたが、3年かかって決まったことはゼロ。なぜなら決裁権者がいなかったから。叩き台を提供することで、次の一歩につながる」と説明した。
今後についても井上氏は「すべての会計・経理業務アプリケーションを開発するメーカーに連絡を入れたが、一部企業からは『止めてくれ』と。蛇足だが日本はフィンテックやIT企業は多いものの、ITに詳しい社長が少ないのが現状。(私は)詳しい人に会ったことがない。日本という国はゼロから作るのが好きで、仕様書に沿ってゼロから作ったものしか評価しない」とウォーターフォール型開発が定着している国内の状況に苦言を呈した。
銀行共通API開発研究会の金融部門 最高情報責任者(CIO)はバンカーズ・ビジネス・ソリューションズ 代表取締役の大場昌晴氏、開発部門 最高技術責任者(CTO)は佐山経済研究所 代表取締役の佐山宇宏氏が務める。記者会見に登壇した参加組織は以下のようにコメントしている。
ROBOT PAYMENT フィナンシャルクラウド事業部 執行役員 藤田豪人氏「人や紙が介在する経理業務は円滑に進まず、データが上流から流れてく工程を取り込めば、業務負荷も軽減する。(銀行共通APIの実現で)開発コストが低下し、新しいソリューションが生まれやすくなる。新しいフィンテックの形を作れるのでは」
フィンテックを支援する税理士の会 会長 税理士 杉山靖彦氏「人の間を紙がつないでいるのが現在の会計業界。どのようにデジタル化するか、現場で働く税理士として声を上げて支援しする活動に注力したい」
エプソン販売 AC MD課 企画課長 勝俣剛志氏「中小企業の約4割がクラウドに移行しているが、アカウントアグリゲーションを活用しているのは1割に満たず、顧客へのコスト負担が(フィンテック推進の)弊害になっている。事務管理部門領域の顧客に対する生産性向上を支援していきたい」

(左から)フィンテックを支援する税理士の会 会長 杉山靖彦氏、フィンテックガーデン 理事 舘村真二氏、フリーウエイジャパン 代表取締役 井上達也氏、ROBOT PAYMENT フィナンシャルクラウド事業部 執行役員 藤田豪人氏、エプソン販売 AC MD課 企画課長 勝俣剛志氏