オージス総研、「Kompira」でシステム運用を自動化--オペレーターの心的負担も軽減

藤本和彦 (編集部)

2020-12-14 07:00

 オージス総研は、大阪ガス(Daigas)の情報子会社として1983年に設立。30年以上にわたりデータセンターやシステムの運用を担っている。特定のベンダーや製品に偏らないオープンな立場で総合的なITソリューションを提供している点を特徴とし、クラウドサービスやITコンサルティングなども展開する。

 Daigasグループの基幹システムの開発、運用を一手に担っており、社会インフラを支える高い技術力とノウハウを蓄積している。事業の多角化を目指し、Daigasグループ以外の企業にもシステムの受託開発、製品・サービスの提供も行っている。

 オージス総研では現在、24時間体制でシステムを監視している。監視対象となるシステムは700に上り、管理対象サーバーは約4000台、毎日2万件のジョブがバッチ処理されている。確認や対応が必要なアラートの数は年間24万件に及ぶという。近年はオンプレミスやクラウドサービスなどシステム構成が複雑化しているため、システム運用への負担は増大する一方になっている。

オージス総研 プラットフォームサービス本部 運用サービス部 運用エンジニアリングチーム マネジャーの吉野幸喜氏
オージス総研 プラットフォームサービス本部 運用サービス部 運用エンジニアリングチーム マネジャーの吉野幸喜氏

 特に監視アラートの対応数が年々増加し、オペレーターの電話連絡にかかる負荷が問題になっていた。また、時期によってオペレーターの業務量に大きな違いがあり、作業量の事前調整やオペレーター要員の調整が必要不可欠だった。さらに、新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言下においても「出社を余儀なくされるようなケースがあった」(オージス総研 プラットフォームサービス本部 運用サービス部 運用エンジニアリングチーム マネジャーの吉野幸喜氏)

 こうした課題を解決するため、オージス総研はシステム運用の自動化を目指し、フィックスポイントが提供する運用自動化ツール「Kompira Enterprise」を導入。障害発生や作業依頼といった各種イベントをトリガーにKompiraの自動化ツールが人に代わって判断、実行することでシステムの運用作業を自動化する。

 まず、監視システムで検知したアラートに応じて、インシデント登録や障害通知を自動化する仕組みを構築した。これにより、オペレーターが長時間拘束される問題を解消。担当者への電話連絡に加え、自動メールで通知することで確実にメッセージを伝えられるようになった。

オージス総研 プラットフォームサービス本部 運用サービス部 運用エンジニアリングチームの岡島友氏
オージス総研 プラットフォームサービス本部 運用サービス部 運用エンジニアリングチームの岡島友氏

 また、自動音声による電話連絡にしたことの副次的な効果として「オペレーターの気持ちに余裕が生まれるようになった」とオージス総研 プラットフォームサービス本部 運用サービス部 運用エンジニアリングチームの岡島友氏は振り返る。これまでの有人による夜間や休日の障害報告は「心理的な負担が大きかった」という。ミスがミスを呼ぶこともあったといい、監視アラート通報を自動化したことによって、そうした悪循環を断ち切れるようになった。

 同社が次に取り組んだのは依頼作業の自動処理になる。オペレーターによるワークフローの承認後、メールに添付された依頼書の内容確認からメインフレームなどのシステム操作を自動で行う仕組みを構築した。これによって繁忙期に増加する依頼書作業を正確に実施し、工数の増加も抑制できるようになった。

 直近では、4月に各種セキュリティシステムからのアラートメールの内容を自動判別し、対象PCの隔離やネットワークの遮断を自動で行う仕組みを構築した。対応結果の報告も自動で行い、隔離などの失敗時も担当がすぐに対応できるようになった。

 オージス総研では、システムの運用を人工知能(AI)に任せた無人オペレーションを目指している。これが実現すれば、オペレーターは、自動化ツールの維持や保守を行うだけとなり、実際のオペレーションは全て自動化システムが処理するようになる。

 2018年の段階で18人必要だったオペレーターの数を、5年後の2023年には実働9人まで減らすことを目標としている。2020年度までに累計7500時間の工数削減に成功し、年間5万件のアラート通報を自動処理できるようになった。オペレーターの実働数は15人になった。「工数削減は順調に進んでいる」(吉野氏)

 10月には、運用コストの削減を支援するソリューションとしてKompiraの外販も開始している。自社の経験やノウハウを生かした運用全体のアセスメント、自動化コンサルティング、導入構築、運用保守までを統合サポートする運用自動化構築サービスを提供している。

 Kompira Enterpriseを提供するフィックスポイントで代表取締役を務める三角正樹氏は「最終的には、出社ゼロによるフルリモートでの運用業務が可能となる技術開発・サービス提供を目指していく」とアピールする。

 その第1弾として、4月には構成管理をエージェントレスで自動化する「Kompira Sonar」とエスカレーション電話を自動化する「Kompira Pigeon」を、10月には第2弾としてアラートの判断業務を自動化する「Kompira AlertHub」を展開している。

 第3弾では、2021年4月に特定ユーザー向けにセキュアな共同作業を可能にする「セキュアリモートアクセス」の提供も開始する予定だ。これは、多要素認証による本人確認、アクセス履歴や操作ログの取得、ユーザーごとの作業記録、画面共有による共同作業などの機能を提供し、リモートアクセスのセキュリティを強化するものになる。

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