コロナ禍で加速--働き方の多様化で変化する、労働の意味と組織の存在意義

阿久津良和

2020-12-08 06:45

 ネオジャパンは12月2日、オンライントークイベント「NEOJAPAN 未来会議」を開催。「働き方が多様化する現代社会で何が起きているか?」をテーマに、羽衣国際大学(堺市西区) 現代社会学部 教授でタレントのにしゃんた氏、フリージャーナリストの西田宗千佳氏、広島大学大学院 統合生命科学研究科 教授 長沼毅氏が議論を交わした。モデレーターはベンチャーキャピタル米Scrum Venturesの戦略担当バイスプレジデントの桑原智隆氏が務めた。

 桑原氏はZoomで参加している視聴者に「働き方が柔軟になってきた今、組織は必要か?」と尋ねると、92%が「必要」、8%が「不要」と回答した。

 にしゃんた氏は「私も大学教授とタレントのパラレルワーカー。組織とつながって良かったという実感を持つ。(アンケートの結果は今の)社会を現している」と感想を述べ、西田氏は「私はフリーランスのライター、ジャーナリストだが、自分一人でできることは限られる。社会に対して何かをアウトプットする際は、誰かとコラボレーションする『緩やかな組織』を作っている。実質的に組織は必要だ」と、組織の有用性を強調する。長沼氏は「92%の声は今の組織をそのまま肯定するものではない。『もっと良い組織になってほしい』という声に聞こえた」と、個人と組織の関係性を見直す必要性を主張した。

リモートワークで労働の負担が変化

 桑原氏が議題である「働き方が多様化する現代社会で何が起きているか?」を取り上げると、1980年代終わりに来日したというにしゃんた氏は会社組織の成り立ちをなぞりつつ、「私はスリランカ・セイロン生まれだが、セイロンはポルトガル、オランダ、イギリスと植民地支配を受けてきた。独立後に会社組織が生まれてくるものの、ステータスギャップが大きい。(セイロンには)職位で人を区別する風土があった。たとえば食堂やトイレは管理職用、事務職用、一般工員用と区別している」と自身の過去を振り返った。

羽衣国際大学 現代社会学部 教授 タレント にしゃんた氏
羽衣国際大学 現代社会学部 教授 タレント にしゃんた氏

 「だが、1970~80年代に入ると、人を区別しない家族的な日本的経営が世界に広まり、そこに憧れて来日した。大学で日本的経営の素晴らしさや海外進出の可能性をテーマに論文を書き、卒業したら社会から日本的経営が消えていた。たとえば外国人技能実習制度は現代の奴隷制とまでいわれている。大事なのは、組織が人間を大事にできるか」(にしゃんた氏)

 続いて桑原氏は日経HR(千代田区)の「ウィズコロナ時代の転職意識調査」を引用。「今の仕事や働き方に満足しているか」との問いには、22.6%が「満足」、46.3%が「やや不満」、28.6%が「不満」と回答し、約75%が不満や不安を感じている。また「コロナ禍で転職意欲が高まったか」の質問では、35%が「非常に高まった」、22%が「少し高まった」、36%が「変わらない」と、57%が転職意欲を高めていることをつまびらかにした。

 桑原氏はさらにOKAN(豊島区)の「withコロナで変化する『働くこと』に関する調査」も引用。「コロナ禍で離職が増えたと感じるか」の質問に31.5%が「増加」、68.5%が「変化なし」と回答。約3分の1が周辺での離職を実感している。

フリージャーナリスト 西田宗千佳氏
フリージャーナリスト 西田宗千佳氏

 これらの調査結果について問われた西田氏は「地域や労働スタイルといったデータが明らかにされていない。たとえば労働者が大都市圏在住なのか、地方在住なのかで(通勤時の)移動に関する意識は大きく異なる」と語った。

 「もう1つはリモートワークを体験することで(労働の)負担が変化した。たとえば収入的に満足して転職意欲はなかったものの、自身が置かれている(コロナ禍で変化した)労働環境を踏まえて転職を考える方が増えている」(西田氏)

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