コロナ禍で世界の経済情勢が厳しさを増す中、セールスフォース・ドットコム 専務執行役員 コマーシャル営業の千葉弘崇氏は、国内企業数の大半を占める中小企業でのデジタル変革(DX)の実現が重要だと話す。コロナ禍における中小企業支援への取り組みを聞いた。
セールスフォース・ドットコム 専務執行役員 コマーシャル営業の千葉弘崇氏
「中小企業にとって2020年はコロナ禍の影響が非常に大きいということに尽きる。いまDXの取り組みをしなければ、という危機感はとても強い」――千葉氏は、2020年12月時点における感触をこう話す。国内企業の99.7%を占める中小企業(2018年の中小企業庁調査)でもDXは重要なテーマであり、その必要性を叫ぶだけでなく、現実の動きとして推進しそれを“日常”にしていけるかが2021年の行方を左右する。
近年のセールスフォース・ドットコムは、祖業とも言えるCRM(顧客関係管理)からBI(ビジネスインテリジェンス)やIoT、AI(人工知能)、API(アプリケーションプログラミングインターフェース)などサービス領域を広げているが、千葉氏は中小企業のDXにおいてやはりCRMが起点になると話す。顧客を獲得しその関係の維持拡大を通じて事業を成長させていくのが基本だ。
「『集客・追客・維持』というCRMのビジネスプロセスをベースに、DXへの取り組みを進めていく。ここでわれわれはSales Cloud、Marketing Cloud、Service Cloudを提供し、導入も全部あるいは部分的とさまざまだが、これらを中心として、例えば会計システムと連携し、売り上げを管理したり請求書を発行したりといったデジタルのプロセスを構築していく」(千葉氏)
コロナ禍がもたらす変化の一つに、オンラインへの移行がある。人から人へのウイルス感染をできる限り防ぐ観点から対面接触の代わりにウェブ会議などの手段によって商談をしたりプロモーションしたりする必要がある。千葉氏によれば、中小企業のDX支援では、例えばCommunity Cloudの専用ページ機能を利用して顧客と会議を行う方法を紹介するといったユーザーのサービス活用に軸を置いている。
「ユーザーに必ず1人の担当者が付き、Salesforceのどのサービスや機能を活用すればビジネスの成長につながるのかを提案したり、われわれのパートナーの専門性も組み合わせて事業目標の実現に必要なものを提供したりしている。加えて、数千人が参加するユーザーコミュニティーでは、ユーザーがお互いに悩み事を解決していく取り組みも活発に行われている」(千葉氏)
春先の緊急事態宣言が解除されて以降は、8月に三井住友フィナンシャルグループや傘下のプラリタウンと中小企業のデジタル化支援で業務提携し、同月にはJTBとも地方と都市のデジタル格差の解消に向けて協業を開始。9~10月に独自策として「中小企業デジタル変革支援パッケージ」を期間限定で提供した。
コロナ禍での先行きは見通しづらいが、千葉氏はこうした支援策の拡充と合わせて、「日本経済を支える中小企業のDXはコロナ禍が明けた後の成長の原動力になる。2021年も地方や中小企業の顧客それぞれのDXに即したサポートをより強化し、ビジネスの成長を実現していく」と語る。