2021年に向けたIT企業のトップメッセージや年頭所感を紹介する。
アドビ 代表取締役社長 James McCready氏
2021年が始まりました。1年前の今頃、2020年に起きた事態をだれも予想していなかったでしょう。私も東京オリンピックの開催を心待ちにし、世界中から多くのお客さまをお迎えする賑やかな東京の光景を思い浮かべていました。また、例年のようにお客さまの熱気に包まれながら行う数々のイベントのことを考えていましたし、休暇にはどこへ行こうかと思い巡らせていました。
2020年は、強く印象に残る一年となりました。当初数カ月で収拾するだろうと考えていた新型コロナウイルス感染症のパンデミックは世界中で私たちの生活を一変させました。皆さまお一人お一人がこの困難な状況で工夫したり、耐えたりと手探りでこられたことでしょう。
アドビもまた、この新しい現実に試行錯誤しながら対応してきました。社員の安全と健康、感染拡大を抑えるためにも、早い段階で世界中の社員を在宅勤務に切り替え、対面でのミーティングやイベントは、オンラインで実施することとなりました。4月に開催したAdobe Summitをわずか数週間で全てオンラインに切り替えたのを皮切りに、Experience Makers LiveやAdobe MAXなど数々のイベントをオンラインで開催しました。オンライン開催の利点の1つは、全世界からどなたにでも参加いただけることでした。Adobe Summitには世界199カ国から40万以上の方にご参加いただき、Adobe MAXでは実に世界で2100万回以上の動画視聴がありました。
また、在宅勤務を採用する企業が増え、あらゆる手続きで物理的な接触を減らす努力がなされる中、デジタルワークフローへの移行が進み、Adobe SignやAdobe Acrobat DCなどをご活用いただく機会が一層増えました。
コロナ禍における消費行動の変化に関するリサーチやAdobe Digital Economy Indexでも明らかになったように、人々の購買行動も世界中で大きく変化しました。高齢者を始めとするより多くの方が、日用品などを含む広いカテゴリーの商品をオンラインで購入するようになりました。
昨年、日本の広告費においてインターネット広告費がテレビ広告費を超えたというニュースが話題になりました。この動きはコロナ禍でデジタルチャネルを介したコミュニケーションが活発になったことで加速していくと予想されます。世界中で大量のデジタルコンテンツが速いスピードで制作され、視聴されています。
デジタルが私たちの生活、仕事、学び、娯楽の中心になりつつあり、コロナ禍によってデジタルへの移行は加速せざるを得ない状況になりました。企業や学校、政府や自治体などあらゆる組織がデジタルトランスフォーメーション(DX)を優先事項に据えて取り組んでいます。その移行は、ただ既存の仕組みにデジタルチャネルを追加するのではなく、デジタルな仕組みを中心に据え、よりよい体験を創ることへとシフトしています。
DXとは、ただテクノロジーを採用することではありません。組織の中でデジタルを中心に業務を行い、コミュニケーションをとり、価値を提供することへ変革し、新しいマインドセットを持つことです。
日本はDXが他国に遅れをとっていることが指摘されています。一方で、長年にわたり最先端の技術で世界をリードし、スマートフォンの普及率などから見てもデジタルデバイスやデジタル上でのコミュニケーションは幅広い年齢層で浸透しています。また、カスタマーサービスは世界的に見ても非常に高いレベルです。
デジタルファーストな世界でもこの高いレベルのカスタマーサービスを実現できれば、より優れた顧客体験を創造することができるのではないでしょうか。大変な状況下にありますが、一方で大きな変革のチャンスでもあるのです。
アドビはデジタル体験で世界を変えることを使命としています。DXの課題の一つに挙げられるのがデジタル人材の不足です。アドビはAI(人工知能)を搭載した製品群とコンサルティングサービス、人材育成支援により、企業のDXを支援し、顧客体験の実現を後押ししてまいります。
この前例のない環境を、変化や挑戦を味方につけ、ともに乗り越えて参りましょう。末筆となりましたが、2021年が皆さまにとって実り多き一年となりますことを心より祈念いたしまして、新年のごあいさつとさせていただきます。