弁護士ドットコムは1月21日、事業戦略説明会を開催した。オンラインで完結する電子契約サービスの「クラウドサイン」は、2015年10月のサービス提供開始以来、導入件数は10万社を突破している。
弁護士ドットコム 取締役 クラウドサイン事業本部長 橘大地氏
1873年に開始した印鑑制度から数えて140年超を迎えた今、同社は今後を見据えたロードマップを発表した。その理由として取締役 クラウドサイン事業本部長 橘大地氏は「昨年から『脱ハンコ』という言葉が飛び交った。脱するのは構わないが、140年間の歴史に置き換わる代替サービス、社会基盤が求められている」と説明する。
契約管理、契約決裁、実印を再発明
2020年9月4日、総務省、法務省、経済産業省は連名で「利用者の指示に基づきサービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化等を行う電子契約サービスに関するQ&A(電子署名法第3条関係)」(以下、電子署名法第3条Q&A)と題した文書(PDF)を公表した。
要約すると、電子署名プロセスに十分な水準の「固有性」が満たされている場合、電子文書が真正であると推定される。ここでいう固有性とは、サービス提供事業者と利用者間、サービス提供事業者内部に、一定以上の暗号化レベルやユーザーのユニーク性を担保することを求めたものだ。
日本組織内弁護士協会 理事 弁護士 渡部友一郎氏
日本組織内弁護士協会 理事で弁護士の渡部友一郎氏は、電子署名法第3条Q&Aについて「新電子署名法」だと説明。「ただ行政のお墨付き、Q&Aにすぎない、という誤解が一部に残っている。(電子署名法は)20年前のクラウドサービスが出る前の古い法律。行政の解釈変更で実質的な法改正が行われたというのが正しい理解」だと評した。
その上で電子署名法自体が、20年間アップデートがないOS、馬車と自動車の関係を比喩に用いながら、渡部氏は「自動車が馬車に戻らないように、クラウド型電子署名は社会インフラになる。ただ、既得権を持つ団体から『新しいルール』を覆す試みには注意が必要。新しいルール下では事業者の創意工夫と競争が求められる」と解説した。
2021年夏以降までの計画について、橘氏は「次の100年を支える確約としてタグラインを提示した」と語る。基本的にはクラウドサインの機能やセキュリティ強化だが、これからの100年を支えるためには(1)「契約管理の再発明」(2)「契約決裁の再発明」(3)「実印の再発明」——の3つが必要だと強調した。