IBMは、ブロックチェーン技術を利用して個人の医療情報を開示せずに新型コロナウイルスワクチンの接種状況やウイルス検査の結果などを確認できるようにすることで、社会活動の再開を進めるのに役立つ可能性がある技術である「ワクチンパスポート」の開発を進めている。
私たちは、都市のロックダウンが実施され、世界で何千万人もの人々が感染し、社会的にも経済的にも荒廃した1年を経験したが、新型コロナウイルスの脅威はいまだに去っていない。現在、科学者らの努力によってワクチン接種計画が進んでおり、多くの人はこのことに何らかの「正常な社会」が徐々に戻ってくるのではないかとかすかな希望の光を見ている。
しかしそれが実現するまでの間は、経済の再開や移動の許可、従業員の職場への復帰などのリスクと安全性との間でバランスを取っていく必要がある。
新型コロナウイルス感染症のリスクを管理し、社会的に許容できる水準に抑えるためには、多面的なアプローチが必要だ。ワクチンが行き渡るには時間が掛かることから、当面の間は、引き続き対人距離を維持するルールや旅行時の検疫、大規模な集会の厳格な管理、感染時の自己隔離の義務、接触追跡アプリの利用などを維持していく必要がある。
ワクチンパスポート(健康パスポート)とは
ここ数カ月議論されているアイデアの1つに、ワクチンパスポート(健康パスポート)と呼ばれるものがある。これは、個人が大規模な集会に参加したり、オフィスに通勤したり、エンターテインメント会場に行ったり、スポーツイベントに参加したり、海外に旅行したりすることが許される健康状態であることを証明するものだ。
IBM Digital Health Pass
IBMの欧州担当最高医療責任者であるMark Davies氏と英国とアイルランドにおける同社のブロックチェーンパートナーであるAnthony Day氏は米ZDNetの取材に応じ、同社の「Digital Health Pass」の仕組みについて説明するとともに、新型コロナウイルス感染症が引き起こした新たな需要に対応するために、同社が2020年3月以降に行ってきたこの技術を拡張する取り組み全般について語った。両氏の議論の中には、近い将来に健康パスポートに求められる可能性がある要件の話も含まれていた。
健康パスポートの形態にはさまざまなものが考えられ、例えば、紙の記録やワクチンカード、検査結果が陰性だったことを証明するSMSメッセージなどを利用する方法もある。健康パスポートを実現する方法としては、各医療機関がそれぞれの患者の記録を管理する仕組みもあり得るが、この情報を広く共有して、行事の主催者や航空会社の担当者なども確認できるようにするという全く異なるやり方もあるかもしれない。