Linus Torvalds氏は、「Linux」カーネル5.12の1つ目のリリース候補版(RC1)を使うのは避けるべきだと、オープンソース開発者に警告を発した。
米オレゴン州が雪嵐に襲われ、Torvalds氏の自宅が週の半分以上停電したにもかかわらず、Linuxカーネルのバージョン5.12は予定通りリリースされた。Torvalds氏や何千人ものコントリビューターはバージョン5.12をスケジュール通りリリースしたものの、同氏は5.12のRC1は「double ungood」(非常に良くないもの)であり、ファイルシステムに致命的な問題を引き起こす可能性があるとあらためて呼びかけた。
Torvalds氏は、Linuxカーネルメーリングリストへの投稿で、「今回のマージウィンドウで行ったコードのクリーンアップと単純化の作業は非常に刺激が少ないもので、問題を感じるようなことはなかったが、その中には捉えにくく非常に厄介なバグが存在していた。そのバグは、スワップファイルが正常に動作しなくなるというものだ。そして、スワップファイルの開始地点のオフセットが失われていたという、非常に深刻な形で動作を停止していた。スワッピングは行わていたが、ファイルシステムの間違った部分に書き込まれ、破滅的な結果が生じた」と述べた。
同氏はさらに、「確かにこれは非常に残念なことだったが、このバグはあまり分かりやすいものではなく、通常のテストでは発見されなかった。それはスワップファイルが正常ではなかったからだった。私は問題の開発者を非難しているのではないし、マージウィンドウのタイミングが悪かったからでもない。単純に、滅多にない厄介なバグが発見されなかったというだけのことで、現在のツリーでは修正されている」と続けた。
同氏は開発者に対して、もしこのバグの影響を受けると、「ファイルシステムが基本的にランダムなスワップデータで上書きされてしまうことになる。これは、この業界では『double ungood』と呼ばれるものだ」とジョージ・オーウェルの小説「1984」に登場するニュースピーク(英語を元に作られた架空の言語)の表現を使って開発者に注意を促した。
また同氏は、ダウンストリームのプロジェクトにこのバグが紛れ込んでしまうことを心配している。
「このような注意書きを書いたもう1つの理由は、単にスワップファイルを使っている人にこれを実行しないように警告するためだけではなく、仮に個人的に影響を受けていなくても(私も受けていないし、スワップパーティションを使っている人が多いので、ほとんどの人は大丈夫だろう)、誰かが5.12-rc1タグを使った新しいトピックブランチを作成してしまうことがないようにしたかったからだ」とTorvalds氏は述べている。
同氏は、「面倒をかけて申し訳ない」とメッセージを締めくくっている。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。