日立システムズは、神奈川県予防医学協会に「業務効率化支援サービス」を提供し、腎臓病検診(尿検査)にまつわる業務の効率化を支援した。同協会は、各種検診や健康診断などを通して、神奈川県民の疾病予防や健康の保持増進を支援している。
同協会は、神奈川県における2000校以上の小/中学校や保育所を対象に実施している尿検査の結果報告書の作成業務において、受診者名簿のOCR(光学文字認識)による読み取りやファイル様式の変換などで多大な工数がかかっていた。そこで日立システムズの支援のもと、業務プロセスの改善とRPA(ロボティックプロセスオートメーション)による業務自動化など、デジタル技術を活用した業務変革を実施した。その結果、人手による年間作業時間を500時間以上削減し、労働生産性を12%向上させることができたという。
約65万人を対象とする尿検査にまつわる業務は、名簿回収や取りまとめ、結果報告書の印刷といった大量の事務作業を尿検体の搬入から4日間で行う必要があり、業務負荷が非常に高い状況だった。毎年臨時で1カ月当たり40~50人程度のパートタイム労働者を雇用して対応しているが、年々確保が困難になっており、業務効率化が課題となっていた。
こうした背景から日立システムズは、神奈川県予防医学協会に業務効率化支援サービスを提供。導入に至ったポイントについて、同協会は「RPA適合度の見極めや想定効果の算定に向けて、試用を実施してから本格導入できること」「RPAの適用だけでなく、協会の業務内容を理解した業務改善提案だったこと」「協会職員に向けたRPA活用教育など、現場主導の業務改革をサポートする提案内容だったこと」を挙げている。
今回の取り組みでは、まず尿検査結果報告書の作成業務の一部を対象に、RPAロボットの動作確認と有効性を検証。有効性が確認できたため、業務手順書とヒアリング内容を基に、業務プロセスの改善案やRPAによる業務自動化案を提示した。
具体的には、同協会はこれまで光学メディアや紙などに記載された受診者名簿を尿検体と一緒に受け取っており、名簿のOCR読み取り業務やファイル様式の変換業務が多数発生していたため、日立システムズは名簿をウェブサイトからデータ形式で受け取る方法の追加を提案。その際、新たな業務となる受診者名簿を取得するウェブサイトの入力フォームの設計を支援するほか、光学メディアや紙の提出においても、RPAで自動化する部分と人手で作業する部分を切り分けた。同社は名簿取得や様式変換、印刷業務などのRPAで自動化する部分について設計し、RPAの導入までを担当した。
RPA活用による業務改善のイメージ(出典:日立システムズ)
これにより、尿検査の結果報告書の作成業務の人手による作業時間が年間500時間以上削減されたほか、作業ミスの防止など品質向上も実現した。また、担当者1人当たりの事務処理件数は前年度比で581件増加し、労働生産性が12%向上した。2020年度はコロナ禍の影響で確保できたパートタイム労働者が1カ月当たり10人ほど少なかったが、4日間という所定の期間で対応できたという。
加えて日立システムズは、神奈川県予防医学協会が今後も他の検診業務について現場主導の業務改革ができるよう、RPAに関するハンズオン研修やオンサイトでの技術支援サービスも提供し、さらなるRPA活用に向けた下地づくりを同協会と行った。