新しい「水」としてのデータ

今の日本にアクティブインテリジェンスが必要な理由

今井浩 (クリックテック・ジャパン)

2021-04-23 07:00

 新型コロナウイルス感染症が拡大して以来、企業におけるデータの重要性と評価は急上昇しています。一方で、ビジネスの成果を向上させるアナリティクスの大きな可能性を示すだけでなく、データ活用が加速したことで、従来のビジネスインテリジェンス(BI)ツールやプロセスが不十分であることも明らかになりました。

 第2世代のBIツールは、従業員がデータを自らの手(セルフサービス)で利用できるようにすることに注力しています。従業員の要求に応じてさまざまなチームにインサイトが提供されるようになったことで、BIチームはインサイトの門番としての役目を終えました。データはより直感的なツールによって提供され、ユーザー自身が疑問に対する答えを見つけられるようになりました。

 しかし、CIO(最高情報責任者)やCDO(最高データ責任者)が多大な努力を払ってデータを整備し、必要な時にユーザーに提供できるようにしたにもかかわらず、新型コロナウイルス感染症のパンデミックによって、それだけでは十分ではないことが明らかになりました。

 さらに、市場に出回り始めている第3世代のBIツールでも、この1年間で急速かつ劇的に変化している環境に対応できそうにありません。これらのソリューションは一般的に、人工知能(AI)や機械学習(ML)を統合して、さらに直感的でパーソナライズされたエクスペリエンスを提供します。このアプローチは本質的に間違っているわけではありません。

 しかし、QlikがAccentureと共同で実施した調査(※1)では、労働人口におけるデータリテラシーが世界で21%、日本で9%程度と低いことが明らかになり、データ会社はビジネスユーザーの環境について考える必要に迫られています。

 第2、第3世代のBIツールは、意思決定プロセスを改善できるかもしれませんが、必ずしもよりよい意思決定を保証するとは限りません。Google HomeやAmazon Alexaなど多くの人が家庭で使用しているデジタルアシスタントは、自然言語処理(NLP)機能を一般化して信頼性のあるものにしました。同様に、アナリティクスソリューションも最も直感的なユーザエクスペリエンスを提供するかもしれませんが、データの信頼性が高く、適切に管理され、ほぼリアルタイムのビジネス情報を反映するものでなければ、適切なアクションを実行するための答えは得られないでしょう。

効果的な意思決定のために信頼できるデータファブリックを構築する

 データの価値は、成果があった時、つまり適切なデータを用いて、適切な瞬間に、適切な意思決定がなされた時に初めて得られます。しかし、ビジネス上の決定的な瞬間がいつで、その時にどのような行動を取るべきかを判断する継続的なインテリジェンスを実現するためのデータファブリックを構築するには、インテリジェントなアナリティクスデータパイプラインへの投資が必要となります。

 では、具体的にはどのようなものでしょうか。リアルタイムデータおよび、ユーザーがデータを必要とする文脈(場所、タイミング、利用目的など)に応じた最適なハイパーコンテキストデータは、最終的に企業におけるデータ主導型の意思決定を確実にし、急速な環境変化にも対応する2つの要素になります。迅速なデータアクセスと内部および外部のデータソースを組み合わせることで、ユーザーはビジネスの全体像を素早く把握できるようになり、行動すべき瞬間を特定しやすくなります。

 実際、QlikとIDCとの調査(※2)によると、約半数の企業が過去12~18カ月の間に新しい内部データ(45%)、新しい外部データ(40%)、新しいデータタイプ(40%)をデータパイプラインに導入していることが明らかになりました。

 データへの迅速なアクセスを可能にするだけでなく、データが適切に管理され、クリーンで信頼性の高いことを保証するインテリジェントなアナリティクスデータパイプラインに統合されていれば、企業はそのインサイトに確信を持つことができます。信頼できるデータカタログに統合された後は、直感的なユーザー機能とリアルタイム性が真価を発揮します。BIの次の時代、つまりビジネスのあらゆる瞬間を最適化してアクティブインテリジェンス(※3)を実現するには、この統合が求められています。

 また、AIやMLを活用することで、ユーザーのインサイトを探し出す際のサポートだけでなく、外れ値や即時対応を要する新たな事象の特定にも役立てられる可能性が出てきました。データの信頼性が高ければ、ユーザーは、アナリティクスソリューションにより示された行動を起こすべきビジネスの瞬間や、その際に取るべき行動にも信頼を持つことができます。また、特定のシナリオ下における業務上の意思決定の一部をソリューションにゆだねられるようにもなります。

戦略的成果を上げるために意思決定を強化する

 企業が信頼性の高いインテリジェントなアナリティクスデータパイプラインを通じてアクティブインテリジェンスを実現すれば、より戦略的で俊敏な行動が可能となり、どんなに急速に変化している状況でも適切に行動できるようになります。

 しかし、アクティブインテリジェンスは、より適切かつ迅速な業務上の意思決定を可能にするだけでなく、戦略的な意思決定も含め、企業における意思決定の方法を完全に変えることができます。信頼性の高いインサイトに基づいてビジネスモデルまたはプロセス全体を再設計し、業務上の意思決定プロセスに反映させることが可能です。

 漫然と繰り返される業務上の意思決定を自動化または半自動化することで、ユーザーの迅速な行動を促します。これにより意思決定の負担が大幅に軽減され、想定されるさまざまなシナリオに企業がどのように対応すべきかを提示する、より高度で協調的かつ戦略的な意思決定に集中できるようになります。

 第3世代のBIは、意思決定をより効果的かつ容易にするだけでなく、企業のためにさらに大きな役割を果たす必要があります。データの可能性を真に実現するには、より俊敏かつ、より包括的で、より信頼性が高く、より協調的かつ、より自動化されたものでなければなりません。

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