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デジタルファーストの未来に備える金融セクターの将来展望

今井浩 (クリックテック・ジャパン)

2021-10-19 07:00

 「bank(銀行)」という言葉は、古ノルド語/ゲルマン祖語で「物を一列に並べる」という意味の「bakki」が語源となっています。これまで長きにわたって、金融セクターはまさに文字通りのことを行ってきました。しかし、本質的な部分は変わらないとしても、経営の在り方は時とともに大きく進化しています。

 今では、銀行、金融サービス、保険(Banking、Financial Services、Iinsurance :BFSI)は、21世紀の生活のほぼ全般に影響する、多面的かつ多次元的な存在となっています。Eテイラー(電子商取引の小売業者)とオフライン小売業者の両方で支払い処理に使われているデジタル決済アプリやペイメントゲートウェイ、ワンタッチで株を売買できるデジタルプラットフォームなど、BFSIはプレゼンスを高めています。

 また、この1年間の動きからも分かるように、アクティブインテリジェンスを原動力とするさらなる進化が起ころうとしています。

BFSIセクターの改革が急務である理由とは

 新型コロナウイルス感染症の大流行により、物理的世界の動きが停止したことで、デジタルエコシステムが本格的に動き出すこととなりました。これを反映する形で、非物理的な取引形態が拡大しています。2020年、世界のリアルタイムデジタル決済は前年比で41%増加し、総取引数は700億件を超えました。この急成長に貢献している国には、インド、メキシコ、ブラジル、マレーシアなど、それまで現金での支払いが主流であった新興国が含まれます。

 日本政府は、2025年までにキャッシュレス決済比率を4割程度、将来的には世界最高水準の80%を目指すとしています。2020年のキャッシュレス決済の割合は前年比2.9ポイント増の29.7%と、過去最高の伸び率を記録したことが分かっています(日本経済新聞 2021年6月18日)。新型コロナウイルス感染症が流行する中、QRコードやタッチ決済など非接触型決済が感染症対策の面でも注目され、利用が急速に拡大しています。

 グローバルのBFSIセクターの視点から見れば、これは大きな進歩だといえます。しかし、銀行や金融機関は手放しで喜ぶのではなく、まずは近年顕著となっている2つの重要な動向に注意を払う必要があります。

 コロナ禍においてデジタル取引を利用する人が増える中、詐欺やサイバー攻撃の数も急増しています。VMwareのレポートによると、2020年2~4月にかけて、グローバル金融セクターを狙ったサイバー攻撃の発生件数は、実に238%も増加しています。さらに憂慮すべきことに、脅威の深刻度と量も増しています。攻撃と詐欺の手法は巧妙化し、経験豊富な犯罪者により開発された高度なツールキットにより、誰でもすぐにこれらのサイバー攻撃ができるようになっています。

 BFSI企業は、犯罪者が求めている重要な個人情報や金融情報を大量に保有しています。専門家は、デジタルマイグレーションの加速に伴い、バンキングインフラストラクチャーとそのプロセス、末端消費者の知識における新旧のギャップが悪用される可能性があると以前から警鐘を鳴らしてきました。にもかかわらず、コロナ禍における脅威や詐欺の増加に、BFSIセクターは虚を突かれる形となってしまったわけです。

 2つ目の動向に関しても、ずっと以前から動きがみられます。今日の消費者エコシステムは、より良質でシームレスなサービスを求めるデジタルネイティブがますます増えています。これまで、BFSI業界はデジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みを成功させることで、彼らの要求に辛うじて応えてきましたが、それだけでは不十分なのです。

 この真実は、最近の「stonks(ストンクス)」と言われる株運動、ドージコイン(Dogecoin)の急速な高騰により明らかになりました。インターネットミーム、オンライン掲示板「Reddit」のスレッド、ソーシャルメディア、企業やヘッジファンドに対する不満を抱えた新世代の個人投資家に触発される形で「stonks」のトレンドが発生し、2021年1月1日から2月1日にかけて、主要銘柄で売り持ちを抱えたヘッジファンドが約130億ドル近くの損失を被ることとなりました。一方で、2013年にネット上で話題となった柴犬のミーム「ドージ」をモチーフに作られ、ビットコインを模倣した暗号通貨のドージコインの価値は、今やFord Motor Company(1903年創業)やTwitterを上回るものとなっています。

 このような変化には賛否両論あるものの、ソーシャルメディアが新世代の消費者のハンデをなくすことで主要なトレンドをけん引していることは、結果を見れば明らかであり、BFSIセクターにとって無視できない事実です。

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