自動塗装システムのデータ活用化で製造DXを推進--B-EN-Gと川口スプリング

國谷武史 (編集部)

2021-05-26 13:00

 川口スプリング製作所とビジネスエンジニアリング(B-EN-G)は5月26日、自動塗装システムのIoT化とデータを活用するための仕組みを実装した塗装自動設備ライン「Kawaguchi Spring Manufacturing Internet of Coating System(KS-MICS)」を6月から展開すると発表した。製造品質の向上などを図る取り組みになる。

 川口スプリング製作所は、売り上げの約35%をプッシュ型容器などに使われるスプリング、約65%を製造業で使われる塗装治具や自動塗装機が占めており、どちらも業界で高いシェアを持つ。B-EN-Gは、製造業向けERP(統合基幹業務システム)の「mcframe」などを手掛ける。

B-EN-G 取締役社長の羽田雅一氏
B-EN-G 取締役社長の羽田雅一氏

 B-EN-G 取締役社長の羽田雅一氏は、同社にとって今回の川口スプリングとの成果が、初めての共創ビジネスになるという。「製造業にとってIT投資は、従来では効率化を目的としたが、現在は競争優位の実現に変わりつつある。コロナ禍でもリーマンショック時(2008年頃)に比べてIT投資は活発だ」と説明する。

川口スプリング製作所 代表取締役社長の鬼塚博幸氏
川口スプリング製作所 代表取締役社長の鬼塚博幸氏

 川口スプリング製作所 代表取締役社長の鬼塚博幸氏は、国内製造業の塗装にまつわる現状について、生産拠点の海外展開や人材不足、品質や生産性の向上、環境対応への要請の強まりなどを指摘する。環境貢献や品質向上などの製造業が目指すべき価値を実現すべく、B-EN-Gと協働してKS-MICSを開発した。

 川口スプリングの最新型の自動塗装機は、塗装部と搬送ラインを切り分けており、ロボットによる自動化(製品移載)と、投入・取出部では汎用・協働ロボットを用いて、成型からの一貫した全自動ラインを実現しているという。これにより、歩留まり率の改善を図っている。

川口スプリング製作所の自動塗装機の構成イメージ
川口スプリング製作所の自動塗装機の構成イメージ

 川口スプリング製作所 社長室の橋口健太郎氏によれば、歩留まり率の改善では、塗装の際の温度や湿度、風速、塗料の吐出流量といった多数のパラメーターがあり、それを加味しつつPLC(Programmable Logic Controller)で秒単位、分単位での精密な制御を行う。ただ、各種データの確認と制御などは人が行っているのが現状であり、塗装ラインごとにPLCで制御を行っていることから、システム全体としての自動化に課題があったという。

KS-MICSの概要。システム全体の監視・可視化とライン単位の監視・制御を行う
KS-MICSの概要。システム全体の監視・可視化とライン単位の監視・制御を行う

 今回のKS-MICSでは、自動塗装機とB-EN-Gの設備稼働監視やそのデータの収集・可視化を行う「mcframe SIGNAL CHAIN」を組み合わせた。自動塗装機より約500種類のパラメーターのデータをSIGNAL CHAINで取り込み、(1)設備全体の監視と可視化、(2)ライン単位での監視とアラートの発報、(3)PLCの設定変更――の実現を目指している。

 橋口氏によると、例えば、海外の生産工場で塗装機械にトラブルが発生した場合、現地で対応しなければならないことがある。実際にコロナ禍でも現地で対応を行うことがあったそうだ。コロナ禍を鑑みても海外での事案について日本からリモートで多くの対応ができるソリューションが求められているため、KS-MICSでは、まず設備全体の可視化と塗装ライン単位の監視、制御、改善を支援していく。

可視化のイメージ
可視化のイメージ

 川口スプリング製作所では今後、機器の納入先に応じたサービスを提供し、歩留まりの向上や予防保全、リモートメンテナンスなどを行っていく。これにより同社の顧客における生産性向上や環境貢献に貢献していくことを目指すとした。

 ビジネスエンジニアリング ソリューション事業本部 副事業本部長の志村健二氏は、川口スプリング製作所のようなパートナーとその顧客と三位一体となったデータの活用が新しい価値を創造するものと語り、共創ビジネスの拡充に取り組んでいるとしている。

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