アシストは6月2日、ウェブ分離ソリューション「Ericom Shield」のクラウドサービス版「Ericom Shield Cloud」の販売を開始すると発表した。従来はサーバーを設置して運用するオンプレミス版のみの提供だったが、新たにユーザー側でのサーバーの設置が不要なクラウド版が追加される形になる。
執行役員 ビジネスインフラ技術本部長 兼 サービス事業部長 兼 クラウド技術本部長の小西雅宏氏は、米Erirom Softwareとの関係について「日本における総販売代理店として2012年から活動しており、同社のさまざまな製品を国内で展開。現在は国内600社で採用されている」と紹介した。また同社自身については「『データこそが企業の競争力強化/差別化の源泉である』と考え、創業当初からデータベース、情報活用、運用、セキュリティまで、その活用のお手伝いをしてきた」とした上で、今回発表のErirom Sheld Cloudについて「クラウドならではスピード展開、「Ericom Global Cloud」を基盤とした安定稼働、お客さまによるメンテナンスフリー、これらを実現して非常にコストパフォーマンスのよいサービスになっている」と語った。
アシスト 執行役員ビジネスインフラ技術本部長の小西雅宏氏
米Ericom Softwareの社長でCEO(最高経営責任者)のDavid Canellos氏が概要を説明した。同氏は約10年におよぶアシストとのパートナーシップについて「非常にタイトな関係を構築して、日本国内でさまざまなプロジェクトを成功させてきた」とした上で、現在は「サイバーセキュリティ」「ゼロトラスト」にフォーカスしており、さらに「クラウドサービス」に注力していることを明かした。
米Ericom Softwareの社長でCEOのDavid Canellos氏
また、前職のForrester Researchのプリンシパルアナリスト時代に「Zero Trust eXtended framework」をまとめた“ゼロトラストの提唱者”として知られる、米Ericom SoftwareのChief Strategy OfficerのChase Cunningham博士がゼロトラストのコンセプトを踏まえた対応について概説を行った。同氏はゼロトラストについて「単なるセキュリティテクノロジーではなく、ビジネスをドライブするもの」だと位置付けた上で、従来の境界型セキュリティのアプローチについては「業界では既に失敗したコンセプトだと認知されつつある」とした。またゼロトラストは最近出現したバズワードなどではなく、「基本的な考え方はもう20年くらいの歴史がある」(同氏)ものだと強調した。
米Ericom Software Chief Strategy OfficerのChase Cunningham博士
続いて、アシスト アクセスインフラ技術統括部 技術2部部長の越智一鐘氏が製品を説明した。同氏はまず、Ericom Shieldについて「リモートブラウザーでウェブの参照を行い、ウェブの画面イメージをユーザー端末のブラウザー上に描画する」ことでインターネット上の有害なコンテンツがユーザーの端末上のウェブブラウザーまで到達しないように保護するソリューションであることを紹介。「全てのウェブコンテンツ、スクリプト、ファイルはユーザー端末に混入不可であり、ウェブを一切信用しないゼロトラストアーキテクチャーには必須の機能」だと位置付けた。
Ericom Shieldの概要
その上で、クラウド版の主な特徴として「マルチテナント」「オートスケール」「メンテナンスフリー&安心の耐障害性設計」の3点を挙げた。ユーザー端末にプロキシー接続先として設定するPOP(Point of Presence、ネットワーク接続点)は東京を含む世界25拠点で、大阪POPの開設も計画中という。また、OktaやAzureAD、ADFSなどの外部IDサービスとの連携も可能。
今後リリース予定の機能として、接続先となるウェブサイトの信頼度を各種情報に基づいて判別し、分離処理を行うか、直接アクセスを許可するかを判断する「Intelligent Isolation」や、ブラウザー経由で利用されるZoomやMicrosoft Teamsなどのオンライン会議ツールの分離を行う「Ericom Virtual Meeting Isolation」も提供を開始する予定(いずれもオプション)。
アシスト ビジネスインフラ技術本部アクセスインフラ技術統括部 技術2部部長の越智一鐘氏
提供形態は、「Shield Cloud」と「Shield Cloud Lite」の2つの形式が用意される。Shield Cloudは全ユーザー数分のサブスクリプションを購入するものになる。Shield Cloud LiteはURLカテゴリーフィルターなどを併用し、特定カテゴリーやリスクの高いウェブサイトだけをShieldでブラウジングする場合に利用可能なサブスクリプションで、同時利用できるブラウザーコンテナー数の上限は「サブスクリプションしているユーザー数の10%まで」(越智氏)となる。
参考価格は、100ユーザー契約時の1ユーザー当たりの年間サブスクリプションでEricom Shield Cloudが1万7666円から、同Liteが3739円から(いずれも税別)。初期費用は不要で、要望に応じて有償の技術支援サービスの提供も可能。
Ecrom Shieldの価格体系
同社では競合製品としてMenlo Securityを挙げている。従来はクラウドサービスのMenlo Securityに対して、Ericom Shieldはオンプレミス版として棲み分けできていたが、今回のShield Cloudの提供開始によって直接競合することになる。競合優位点としては、ファイル/コンテンツの無害化技術に加えて画面転送型の分離もサポートし、両方式を利用可能な点だという。
販売目標は今後約1年間で100社。同社での最小提供ユーザー数は100ユーザーだが、100ユーザー未満での利用を希望するユーザーは同社のパートナーが提供するサービスを利用することができる。