Ericomの最高経営責任者(CEO)に、Symantecでグローバルサービスプロバイダー担当シニアバイスプレジデントを務めていたDavid Canellos氏が就任した。2019年1月1日から陣頭指揮を執っている。
同社は新体制の下、注力製品であるリモートブラウザ分離(インターネット分離)ソリューション「Ericom Shield」を軸に、クロスセル戦略やチャネル戦略を強化していく考えだ。「EricomのCEOになって2カ月がたった。さまざまな顧客やパートナーと交流し、自社の強みや特徴を分析してきた」(Canellos氏)
Ericomの新CEOに就任したDavid Canellos氏
1993年にイスラエルで創業したEricomは、45カ国以上で3万社以上の顧客を抱える。業種業態は多岐にわたり、大企業から中小企業まで幅広く使われているという。ただ、「新規顧客の獲得という点では非常に大きな成果を上げているが、クロスセルに関してはまだまだ改善の余地がある」(同氏)と現状を指摘する。
今後の主力製品として軸足を置くのがEricom Shieldである。組織のネットワークから分離されたLinuxコンテナ内の独立したブラウザでウェブサイトを描写し、その画面をエンドポイントのブラウザに配信する仕組みで、企業のネットワークやデバイスに害を及ぼすマルウェア、ランサムウェアなどの脅威をエンドポイントに到達しないようにする。
これは、業務システムなどの機密情報を取り扱う端末のネットワークと、インターネットに接続する端末のネットワークを切り分ける、いわゆる「インターネット分離」という考え方だ。官公庁や自治体、教育機関、金融機関、医療機関、大手製造業などで導入が進んでいる。「多くの調査研究において、組織内ネットワークに入り込むマルウェアの60%以上はブラウザを経由しているという事実が指摘されている」とCanellos氏は述べる。
ユーザービリティの高さも特徴という。ローカルブラウザのお気に入りを利用可能なほか、ローカルプリンタでの印刷や、クリップボード対応、動画/音声の再生、ファイルのダウンロード/アップロードも可能となっている。VOTIROのファイル無害化ソリューションも組み込まれており、PDFやJPEG、WordやExcelの文書といったファイルも無害化する。
インターネット分離関連の製品は、高いセキュリティを確保するのと引き換えに、ユーザーの利便性が損なわれてしまいがちだが、Ericom Shieldはそうした点にも配慮した作りになっているとする。
今後は、ファイアウォール(FW)やセキュアウェブゲートウェイ、クラウドアクセスセキュリティブローカ(CASB)、エンドポイント侵害検知・対処(EDR)といったセキュリティ製品との連携を強化する予定。既にシングルサインオン(SSO)領域では主要なプレーヤーとの統合はできているという。
「Ericom Shieldと既存ツールを組み合わせることで、社内システムやクラウドサービス、モバイルなどを横断した、さまざまな業務環境での利便性やセキュリティを改善できる。これによって企業のデジタル化を支援していきたい」(Canellos氏)
個々の製品ラインではなく、さまざまな製品を組み合わせて販売していくために、チャネルパートナーと協力していく考えだ。Ericomでは、世界各国のパートナーや地域のチャネルプレーヤーと提携しているが、セールス、マーケティング、トレーニング、クロスセル戦略を組み合わせ、自社製品のサービス展開やサポート体制を強化していく。
日本国内では、アシストが総代理店を務めており、各種パートナーと連携している。「アシストは総代理店として、リセラーやパートナーと密に結びつき、自分たちの販売戦略を持って積極的に動いている。これを成功モデルとして、各地域で盛り上げていきたい」(同氏)