記者会見では、CxOやリモートワークを推進する部門向け小冊子「数年先の将来に向けた8つの予測」の概要が語られた。順番に紹介しよう。
「1.ハイブリッドワークが働き方の主役となる」は、業務内容や従業員のライフステージに応じて勤務形態を自由に選択する働き方を意味する。Lenovoの調査によれば、オフィスや自宅など勤務場所を必要に応じて選択するハイブリッドワークを選択する企業の割合は42%(ほぼ在宅勤務は31%、完全在宅勤務は11%)だった。
「2.サードプレイスは機能別に組み合わせて使われる」は、自宅でも事業所でもない第3の場所“サードプレイス”の提供を意味する。コロナ禍以前もコワーキングスペースやサテライトオフィス、個人向けのワークブースや日中のカラオケボックスなど多様な場所を選択してきたが、今後は企業自身が資産として働く場所を提供していかなければならないという。
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「3.ワーケーションはオフィス機能の一部を代替する」は、オフィスの役割が変化することを指す。Lenovoの調査によれば17%のスタートアップ企業や中小企業がコロナ収束後に完全在宅勤務への移行を選択している。
レノボ・ジャパンは2019年から試験的にワーケーションを検証しているが、元嶋氏は「フェイスツーフェイスから得る五感情報はオンライン会議では難しい。オフィスはコラボレーションの場に変質していく」と説明した。
「4.オンライン会議の質に重点が置かれる」はデバイス品質から得られる体験の向上を意味する。読者諸氏の多くもウェブカメラやマイク性能が、オンライン会議参加時やウェビナー視聴時の集中力を左右することは経験したことがあるはずだ。元嶋氏は以下のように述べながら、ユーザーインターフェース(UI)の改善など改善箇所は多いと指摘する。
「これまではオンライン会議への対応需要で『使う』ことに焦点が当てられてきた。(今後は)音質や映像品質、従業員のケアが重要になる」
「5.情報共有基盤の整備がビジネス推進の鍵となる」は、ハイブリッドワークで分散する労働環境を踏まえた提言だ。Lenovoの調査では29%の企業がリモートワーク先からの情報アクセスに課題を抱えつつも、80%がすでに情報共有ツールを導入している。
「かつてないほど『形式知化』の重要性が高まっている。社内ポータルサイトの整備、学習プロセス・新入社員のトレーニングのオンライン化など、場所やデバイスにとらわれず情報を入手できるインフラ整備が(企業に)求められている」(元嶋氏)
「6.5Gが働き方の柔軟性を大きく向上させる」「8. 従業員それぞれが自ら最適なIT環境を選ぶ」は文字どおりの説明なのでここでは割愛する。
「7.従業員が自宅で業務用PCをセットアップできるようになる」に注目したい。一昔前は企業が貸与したPCのセットアップはIT部門の業務負担に数えられていたが、昨今はWindowsならWindows Autopilot、Google Chrome Enterpriseならゼロタッチ登録を用意すれば、従業員はログイン1つで必要なファイルやアプリケーションを展開できる。
「(一連の自動化は)実用フェーズに達している。IT管理者の負担を軽減する仕組みを活用すべきだ」(元嶋氏)
8つの予測に共通するのは従業員体験の向上である。Lenovoの調査では従業員体験の改善に対する投資対効果(ROI)は5倍に達し、10%の生産性向上に生み出すという。元嶋氏は「同じ場所・同じ働き方という画一的な働き方が終焉を迎えている。一人ひとり最適な働き方が異なる、という前提で物事を考えることが必要」だと主張した。