「楽楽精算」などのクラウドサービスを提供するラクスは10月25日、改正電子帳簿保存法に関するメディア勉強会を開催した。
政府が2022年1月1日から施行する同法は承認制度の廃止やタイムスタンプ要件、検索要件の緩和、取引データ保存義務化などの変更が加わる。領収書や請求書のペーパーレス化を推進する一方で、PDFで受領した取引関係書類の紙での保存は禁止されるなど注意点は多い。
TOMAコンサルタンツグループ 取締役 持木健太氏(中小企業診断士)
勉強会に登壇したTOMAコンサルタンツグループ 取締役で中小企業診断士 持木健太氏は「これまでの法令要件を抜本的にくつがえす大規模な法改正。(企業の準備)期限は差し迫っている」と早期対応をうながした。
電子帳簿保存法の改正内容、7割が「知らない」
ラクスは、全国の従業員規模が30~1999人の企業の経理や財務、会計の担当者1009人を対象に電子帳簿保存法に関する意識を9月22~27日に調査。電子帳簿保存法の改正内容を把握している割合は27.7%。残る72.3%は「知らない」、もしくは「法改正自体は把握しているが、内容を把握していない」という(有効回答数787)。
PDFなどで受け取った請求書のデジタル保存義務に関しても、把握している割合は26.6%。把握していない割合は73.4%におよんだ(有効回答数688)。同様の質問を電子帳簿保存法に則して運用している経理担当者に限定すると、把握率は31.3%に向上するが、68.7%は改正内容を把握していない(有効回答数134)。
電子帳簿保存法対応システムの導入意欲は82.8%と高いものの(有効回答数535)、443人の有効回答があった内訳を見ると、「すでに動いている(20.1%)」「まだ動いていない(55.5%)」「実際は導入しないと思う(24.4%)」という現場の声が見えてきた。
自社の請求書発行工程は73.4%が紙・郵送、22.4%が手動によるPDFのメール添付、10.7%がサードパーティーの電子請求書発行システムを利用している。電子帳簿保存法の認知度が低いことに対して、ラクス 楽楽精算事業統括部長 吉岡耕児氏は「訴求しなければならない」と語った。
改正電子帳簿保存法の5つのポイント
1998年から始まった電子帳簿保存法は利用可能な要件が厳しく、すぐさま社会に浸透したとは言いがたい。2005年にはスキャナー保存制度が導入されたが、「申請は150件程度しかなかった」(持木氏)という。現在の緩和が始まるのは10年後の2015年。スキャナー保存制度の要件が緩和され、現在の改正電子帳簿保存法に至った。
持木氏は改正電子帳簿保存法の特長として、以下の5点を並べた
- 「承認制度の廃止」
- 「優良電子帳簿システムで作成された帳簿データの優遇制度」
- 「国税関係書類のスキャナー保存の要件緩和」
- 「電子取引データの保存の厳格化」
- 「罰則規定の制定」
1.「承認制度の廃止」は、所轄税務署へ3カ月前から関連書類の提出が必要だった手続きが廃止。
2.「優良電子帳簿システムで作成された帳簿データの優遇制度」は「システム間の相互関連性の確保」「訂正および削除の履歴が残るシステム」「関係書類の備え付け」「見読可能性の確保」「検索機能の確保」の5つを満たす電子帳簿であれば、個人事業主は青色申告特別控除の控除額65万円適用、法人は申告漏れに課される過少申告加算税が10%から5%減免される。ただし、個人事業主は所轄税務署への事前申請が必要だ。