人工知能（AI）モデル開発に不可欠なデータの収集やラベリングサービスなどを提供する、オーストラリアのAppen（アッペン）は11月4日、日本法人となるアッペンジャパンの設立を発表した。
Appen CEO Mark Brayan氏
Appen 最高経営責任者（CEO）Mark Brayan氏は日本法人設立に対して「日本は技術的に進んだ国の1つ。すべての業界で機械学習ソリューションが受け入れられると認識している。日本発のAIソリューションが誕生すればわれわれもうれしい」と日本市場の拡大を期待する言葉を寄せた。
グローバルでは自社データの他社との共有に前向き
AIモデルの開発には、テキストや音声、画像など各種データにタグを付けるアノテーション（注釈）とラベルを付与したトレーニングデータが欠かせない。オーストラリアのAppenは、アノテーションとデータ収集の要件を定義し、実作業するクラウドワーカーを採用し、品質を管理しながら顧客にトレーニングデータを納品するビジネスを展開してきた。2015年にオーストラリアで上場を果たし、現在は170カ国235言語に対応している。
Appen 中国APAC担当シニアバイスプレジデント Roc Tian氏
自社の強みとして同社で中国とアジア太平洋（APAC）を管轄するシニアバイスプレジデントのRoc Tian（ロック・ティエン）氏は、「クラウドワーカー、そしてプロジェクトマネージャーに対して、さまざまなオートメーションで負荷を軽減した低コスト。また、クラウドワーカーに高い倫理規則を科してきた。トレーニングデータからバイアスを排除し、顧客のリスクを軽減している。そして、われわれと契約する100万人以上のクラウドワーカーネットワークと各種専門知識で、顧客のAI実装と市場投入の時間を短縮できる」と主張した。
アッペンジャパン 代表取締役社長 神武秀一郎氏
2020年6月から国内展開を開始し、2021年8月3日に日本法人を設立したアッペンジャパン代表取締役社長 神武秀一郎氏は、同社の調査レポート「State of AI and Machine Learning」を引用して、「多くの組織が外部のトレーニングデータプロバイダーと提携し、AIプロジェクトの大規模展開やモデルの改善に活用している。また、企業はデータのセキュリティとプライバシーに高い関心を持ちつつも、 自社データを他者と共有することに前向きだ」とグローバルのAI開発動向を解説した。
同社が披露した「IDC Forecasts Improved Growth for Global AI Market in 2021」によれば、日本のAI市場は年平均成長率は25.5％で推移し、2025年には約4910億円に達する。
本格展開を進めるアッペンジャパンの神武氏は「基本的だが、営業、マーケティング、パートナーを重視」し、PwCコンサルティングと10月に戦略的提携を結んだことを明かした。PwCコンサルティングとともに、コンプライアンスの効果を最大化する「守りのガバナンス」と、ビジネスの成果最大化を目的とした「攻めのガバナンス」を目指す。
国内では音声認識で苦慮していたカーナビゲーションを開発する某企業に対して、アッペンジャパンは日本語を含む複数の言語で作成したテストフレーズ、複数言語に対してネイティブスピーカーが地名に関する発話データを提供した。
また、フュートレック（大阪市淀川区）が受注した、情報研究通信機構（NICT）の自動音声翻訳で使用する大規模音声データの要望に対し、アッペンジャパンは日本語、中国語、韓国語、ロシア語、東南アジアのマイナーな言語、日本人の子どもによる音声データと書き起こしデータを提供している。
