新潮流Device as a Serviceの世界

PC運用のDX--キーワードその1「API」

松尾太輔 (横河レンタ・リース)

2021-12-02 06:00

 前回は、多くの日本企業でなかなか減らないPC運用のToil(労苦、ここでは自動化可能なのに自動化されていないメイン業務に割り込んでくる単純繰り返し作業の意)が、いかに個人や組織にダメージを与えるものかを解説しました。Toilを削減するには、Device as a Serviceの導入が有効です。今回から数回にわたって、Toil削減に重きを置いたDevice as a Service導入のポイントを解説していきます。キーワードは、「API連携」と「ワークフロー自動化」です。

デジタイゼーションとデジタライゼーション

 まず、Toilを削減するDevice as a Service導入の最終的なゴール(なりたい姿)を明確にしておきたいと思います。それは、PC運用のデジタルトランスフォーメーション(DX)に他なりません。昨今は、DXの言葉を聞かない日はないというくらい多くの企業が率先して取り組んでいます。

 DXは、単に紙の業務をウェブシステムなどに置き換えれば達成できるのかというと、そうではありません。それは、「デジタイゼーション」(Digitization)と言います。それに対して、労苦の多いPC運用から管理者を解放するような、デジタル化することでより高い付加価値を踏み出すことを「デジタライゼーション」(Digitalization)と言います。

 デジタイゼーションとデジタライゼーションの違いは、多くの記事で解説されているので割愛しますが、逆に言えば、それほど勘違いしている人が多いということでもあります。単なる紙の業務のデジタル化は、DXではありません。真のDXはデジタライゼーションです。

 デジタル化したことにより、大きな付加価値を得なければDXとは言えませんし、そもそも経営課題として全社で取り組んでいく意味がありません。よくあるのが、紙の帳票を「方眼紙Excel」に置き換えDXだと言っている例です。これでは、運用そのものが変わっていないのです。単に、「メールで送れるようになった」「紙代が削減できた」程度の効果です。デジタル化するタイミングで業務をデジタルに最適なモデルに再構築することが必要で、それが伴ったデジタル化がデジタライゼーションです。これこそが真のDXなのです。

 この連載でも常々申し上げていますが、今のPC運用業務をそのままDevice as a Serviceで実現しようとすることは誤りです。「本当に必要なの?」という多くの手作業を単に自動化するのではなく、従業員が最適で、最高のパフォーマンスで働ける、働きやすい環境を提供するとともにIT部門の真の役割である全社DXに推進できるように、根本的にPC運用業務を見直す――その先にデジタル化があることこそがPC運用のDXというわけです。そして、これがDevice as a Serviceの導入の最終ゴールです。その結果、多くのToilが削減されます。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. セキュリティ

    「デジタル・フォレンジック」から始まるセキュリティ災禍論--活用したいIT業界の防災マニュアル

  2. 運用管理

    「無線LANがつながらない」という問い合わせにAIで対応、トラブル解決の切り札とは

  3. 運用管理

    Oracle DatabaseのAzure移行時におけるポイント、移行前に確認しておきたい障害対策

  4. 運用管理

    Google Chrome ブラウザ がセキュリティを強化、ゼロトラスト移行で高まるブラウザの重要性

  5. ビジネスアプリケーション

    技術進化でさらに発展するデータサイエンス/アナリティクス、最新の6大トレンドを解説

ZDNET Japan クイックポール

注目している大規模言語モデル(LLM)を教えてください

NEWSLETTERS

エンタープライズ・コンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]