人工知能(AI)技術の普及は目覚ましく、AIは市場で競争する上での差別化要因だと考えられている。しかしいつかは、クラウドがそうだったように、テクノロジーが市場全体に行き渡ってしまい、競争上の差別化要因にはならなくなる日がやってくる。今後、AIで成功している企業は、人間のイノベーションやビジネスセンスをAI基盤に適用している企業になるだろう。
これは、RELXが発表した調査レポートの中で明らかになった課題だ。調査は米国の上級幹部や上級意思決定者ら約1000人を対象としたものだ。このレポートでは、AIを利用している企業が(少なくとも米国内では)全体の81%に達していることが明らかになった。RELXが2018年に実施した調査では48%だったため、3年間で33ポイントも増加したことになる。また、調査の回答者が、AIが出している成果を高く評価していることも分かった。回答者の93%は、AIは自分たちのビジネスの競争力を高めていると答えていた。一方、調査対象の95%がAIシステムを構築できる人材を見つけるのが困難だと回答していたのは、AIが普及したことの裏返しかもしれない。さらに、AIシステムが潜在的な欠陥を抱えている可能性があることも明らかになった。回答者の75%は、AIシステムによって職場にバイアスが持ち込まれるリスクがあると懸念しており、64%は、自分たちのシステムにはバイアスがあると認めている。
つまり、AI技術にはまだ大いに改善の余地があるということだ。AIを実現し、できる限り公平で正確なものにできるかどうかは、人間にかかっている。
Datatronの最高経営責任者(CEO)Harish Doddi氏は、「AIや機械学習の導入事例には失敗も多いが、それはほとんどの場合、技術自体よりも、それを取り巻く環境の問題だ」と話す。AIに移行するには、適切な人材、リソース、そしてシステムが必要だと同氏は言う。
ビジネスに目に見えるほどの恩恵をもたらすには、AIと機械学習を十分に理解する必要がある。Honeywellのコネクテッド建築物担当ゼネラルマネージャーであるUsman Shuja氏は、AIや機械学習が世の中で使われるようになってからしばらく経つが、「まだその本当の能力を解き明かす作業は緒に就いたばかりだ」と話す。しかしその一方で、「とはいえ、他人の失敗から学べる貴重な教訓は多い。ほとんどどんなビジネスのどんな部門でもAIから大きな付加価値を得られるはずだが、企業が犯す可能性のある最大の間違いは、どんな価値を実現したいかを明確にしないまま、AIのためにAIを導入することだろう」とも述べている。
それに加えて、AIの導入には巧みなチェンジマネジメントが必要だとShuja氏は言う。「世の中に出回っている最先端のAIソリューションを導入したとしても、従業員が新しいやり方に合わせて行動を変えられない、あるいは変えようとしないのであれば、そこに価値が生まれることはない」と同氏は語った。