オープンソースのデータベースを手がけるMariaDBは米国時間2月1日、ニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場し、公開企業となる意向を発表した。新規株式公開(IPO)のトレンドが続く中、その波に乗り遅れまいとしているようだ。特別買収目的会社(SPAC)であるAngel Pond Holdingsとのパートナーシップによって実現する。同社はシリーズDラウンドで1億400万ドル(約120億円)を調達したことを明らかにした。シリーズDでの企業価値評価は、ユニコーン企業には及ばない6億7200万ドル(約770億円)だった。
今回の資金調達で、MariaDBの現在の路線が変わることはなさそうだ。社名はMariaDB plc(公開有限会社)とわずかに変わるものの、引き続き最高経営責任者(CEO)Michael Howard氏が率いる。SPACのAngel Pondは、Goldman Sachsの元パートナーであるTheodore Wang氏と、Alibaba Group(阿里巴巴集団)の共同創業者であるShihuang "Simon" Xie氏によって設立された。
フィンランドのヘルシンキに本社を置くMariaDBは、MySQLからフォークされるかたちで誕生した。MySQLは、Oracleが2010年にSun Microsystemsを買収したことで、Oracleの資産となっている。MariaDBは、MySQLに端を発するプラガブルエンジンアーキテクチャーの利点を活用し、規模にしては極めて多様な製品ポートフォリオを提供する企業へと進化してきた。現在、「MariaDB Enterprise Server」「MariaDB MaxScale」「MariaDB ColumnStore」「MariaDB Xpand」「SkySQL」などの広範なサービスを展開している。
MariaDBは、米株式市場が1月に大きく下落したものの、IPOという好機の扉がまだ閉ざされていないという可能性に賭けている。2021年に大きく注目されたIPOには、6月にビッグデータ業界でConfluentが8億2800万ドル(約950億円)を調達したIPOなどがある。この数カ月後には、DatabricksがシリーズHラウンドで16億ドル(約1800億円)という巨額の資金を調達している。この金額は、同社が余剰金で自らのベンチャーファンドを設立できるほどの額だった。また、同社が380億ドル(約4兆3000億円)という企業価値評価を武器にしてIPOに踏み切るかどうかではなく、いつ踏み切るのかについて推測がさらに高まったのは言うまでもない。
MariaDBが、SPACを介したIPOというトレンドが終わる前に、今回の取引を間に合わせたのは明らかだ。1年ほど前にホットなトレンドとなっていたSPACは現在、厳しい逆風にさらされている。SPACは、株式未公開企業を買収して公開企業にするためだけに設立された、上場しているシェルカンパニーだ。「白紙小切手会社」とも呼ばれる。買収される企業にとって、SPACは株式公開に向けた事実上の近道となっている。上場企業が買収取引を実施する場合、被買収企業はIPOに通常必要とされる情報すべてを開示する必要がなくなるためだ。しかし、規制強化や金利上昇、過去1年間のSPAC銘柄の期待外れな成果といったいくつかの理由により、SPACバブルの風潮は消えつつある。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。